神殺しのクロノスタシスⅢ
しかし。

午後三時。おやつの時間。

何となく、嫌な予感はしていたが。

「シルナ!ダイエット守ってるか!」

「ふぎゅっ!」

突撃とばかりに、午後三時に学院長室を訪ねると。

四角いチョコレートの箱から、チョコを一粒摘んでいるシルナを発見。

はい。

現行犯逮捕、再び。

これには、寛大なはずの俺も、こめかみに血管が浮いた。  

こ、の、野郎は…。

「…」

「ちがっ…違うんだよ、これは!まだ二粒しか食べてないし…」

しかし、三つ目を食べようとしてたんだろ?

つーか、一つでも食べてたのが悪いんだよ。 

「チョコレートが、チョコレートがね、私を呼んで…」

「…」

「一粒だけ!って思って。そしたら二つ目のチョコが私を見つめてて…」

「…」

「これはもう食べてあげないと可哀想だと思って…」
 
「…」 
 
「…我慢したけどどうしても食べたかっんですごめんなさい!」

よろしい。

いや、よろしくはないが。 

素直に謝罪したのは偉い。

しかし、チョコレートを食べてる時点でアウトだ。

「お前さぁ…やっぱりダイエット向いてねぇよ」

俺なりに、ちょっと考えてみた。

うん、やっぱり無理だよ。

「え…?」

「イレースの言ってた通りだ。お前が砂糖漬けになって、もう何百年になる?そんな毎日を過ごしてきて、いきなりお菓子やめます!は無理だ」

こんな砂糖中毒者が。

いきなり砂糖断ちして、成功する訳がない。

無理無理。

「意志が弱過ぎるんだよ。三日坊主どころか、数時間も保ってないじゃん」

「そ、それは…!でも、ちょっとは我慢…して…」

自信なくしてるじゃん。

「だってチョコ食べたい…」

半泣きのシルナ。

「ほらな?無理なんだよ。もう諦めて、ブクブク太れ。その方がお前の精神的健康に良いだろ」

「…!」

「魔導師なんだから、生活習慣病で苦しむことも無し。精々見た目が醜くなるだけだ」

あぁ、でも。

戦闘になることを考えたら、動きが鈍重な奴がいると、守るのが大変だな。

いや、むしろその分厚い脂肪の塊で、攻撃を防いでもらおう。

そうだ、それが良い。

ナジュを盾にするより、余程罪悪感が少なくて済む。
 
「ダイエットなんてやめだ、やめ。はい終了。好きなだけ食べ…」

「…それじゃ駄目だ!」

いきなり。

シルナが、がばっと立ち上がった。

…何だ?
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