神殺しのクロノスタシスⅢ
…素晴らしい決意表明で、感動の拍手を送りたくなるんだが。

一つだけ言って良い?

食べ物を、窓から投げるな。

今頃多分、アリが集ってる。

アリにしてみれば、エサが落ちてきたと喜んでるかもしれないが。

しかし、食べ物を投げるのはやめましょう。

とにかく。

俺は、シルナからゴミ袋を受け取った。

…どうしよう、これ。

あまりにも大量の菓子で、お前、こんなに溜め込んでたのか、と突っ込みたくなるけど。

捨てるのは勿体ないし、後で生徒にでも配るか。

菓子達も、シルナ一人にバクバク食べられるより。

生徒達に、仲良く分配される方が嬉しいだろう。

それにしても。

「良いのか?本当に…」

「良いの!早く、早く持っていって!私の決心が鈍らないように!」

「わ、分かった」

シルナが、そこまで言うなら。

俺も、それに応えるよ。

本気なんだな。今度こそは本気なんだな?

信じて良いんだな?

少なくとも今、この部屋に、シルナの好きな菓子はない。

食べようと思っても、菓子がないなら食べようもない。

俺は、お菓子の詰まったゴミ袋を片手に、食堂に向かった。

食堂で、生徒達の今夜の食後のおやつにしてもらうと思ったのだ。

食堂に、シルナのおやつ達を渡して。

学院長室に戻ってきてみると、俺は度肝を抜かした。

学院長室の、扉に。

さっきまでなかった、貼り紙が貼ってあるではないか。

手書きの、乱暴な字で。

しかも、真っ赤なペンで。

『学院長ダイエット中につき、今後しばらくお菓子の配布を中止します。ごめんね!』と。

し、シルナの奴…。

本当の本当に、今度こそ本気なんだ。

ちょっと泣きそうになった。

あいつ…やろうと思えば出来るんだな。

どうせ無理に決まってると、たかを括っていた。

しかし、そうではなかったのだ。

シルナだって、やれば出来るシルナだったんだ。

なら、俺も。

シルナダイエットプロジェクトの、専属インストラクターとして。

シルナダイエットプロジェクトの行く末を、見守らせてもらおう。

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