神殺しのクロノスタシスⅢ
こうして。

 

シルナの、ダイエットプロジェクトは進んだ。

シルナは頑張っていた。

かつてないほどに、頑張っていた。

あまりに甘いものが食べたくて、悶ていたこともあった。

「ふんにゅぎゅあぶべばろばあなばばば」とか、意味不明な言葉を発しながら。

床の上にゴロゴロ転がってて、こいつはもう駄目かと思ったこともあった。
 
俺もインストラクターとして、大変な思いをした。

ペンを見れば「あ、ポッキーだー。美味しそー」と口に入れようとするのを止め。

消しゴムを見れば「あ、こんなところにチョコレートが!」と口に入れようとするのを止め。

何なら生徒が歩いているのを見て「ケーキ…ケーキが歩いてる…」と涎を垂らすのを止め。

危うく学院内で、カニバリズムが発生するところだった。

シルナは耐えた。そして泣いた。

「うわぁぁぁんお菓子食べたい食べたい食べたいよ〜っ!!」

と、恥も外聞もなく、子供のように子供のようなことを叫んだり。

シルナは耐えた。そして怒った。

「何で私がお菓子我慢しなくちゃいけないの!?おかしいよそんなの!お菓子だけに!」

と、面白くも何ともない洒落を交えて、悪態をついたり。

とにかく、シルナは頑張った。

最初は小馬鹿にしていたイレースが、ちょっと一目置くほどには頑張っていた。

そして、気がついた頃には、一週間のお菓子断ちに成功していた。

これなら、あと三週間も続けて、計一ヶ月も経てば。

随分体重も落ちてるんじゃないか、と思われた、

その、矢先のことだった。
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