神殺しのクロノスタシスⅢ
―――――――…。

「…あれ?」

気がついたときには。

俺は、魔導部隊隊舎の廊下に突っ立って、ぼんやりとしていた。

…俺、何してたんだっけ?

…あ、そうだ。

ヴァルシーナだ。あの女のことを、帰ってシルナに伝えなくてはならないのだった。

ここで、呆けている場合ではない。

幸い、社会見学の日程は、あの訓練場での体験訓練で終わりだ。

生徒達には悪いが、少し早めに切り上げて、学院に戻ろう。

ぐずぐずしていられない。

俺は、急いで訓練場に戻った。

そこでは、俺の代わりにシュニィが、生徒達の訓練を見守ってくれていた。

「シュニィ!」

「あ、羽久さん。お帰りなさい」

「悪いが、社会見学は終わりだ。すぐ戻らないといけない」

「…!何かあったんですか?」

もし本当に、ヴァルシーナが三本も四本も刃を持っているのなら。

確実に、シュニィ達聖魔騎士団の力は、借りなければならないだろう。

なら、今のうちにシュニィに話しておくべきだ。

俺は、事の次第を手短にシュニィに話した。

先程ヴァルシーナと遭遇したこと、ヴァルシーナが動き始めていることを…。

シュニィの顔が、一瞬で曇った。

「…そうですか。いつかまた来るだろうとは思っていましたが…」

「とにかく、今すぐ戻って、シルナと話す」

「聖魔騎士団の代表として、私も同席します」

シュニィは、何の躊躇いもなくそう言った。

「シュニィ…」

「水臭いことはなしですよ。シルナ学院長につくと決めたときから、覚悟は出来ています」

…そうか。

「分かった。頼む」

「はい。任せてください」

俺はすぐに生徒達を集め、当初の予定を少し早め。

シュニィを伴って、イーニシュフェルト魔導学院に帰還した。





…しかし。
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