神殺しのクロノスタシスⅢ
第二部3章
――――――…『アメノミコト』が指定したポイントは。

いつぞや、すぐりが令月を呼び出したのと同じような、深い森の中だった。

昼間でも、不気味なほど木々が生い茂り、陽の光を閉ざしているのに。

こんな真夜中に来たら、それだけでお化け屋敷並みのホラー体験だ。

しかし。

この先に待っているのは、そんなお化け屋敷なんてエンターテイメント性のあるものではない。

「嫌ですね。罠張り放題じゃないですか」

ナジュが、嫌なことを言った。

だが、確かに事実だ。

「おまけに、木や岩の影から奇襲し放題!ドンパチやっても周囲に被害なし!いやぁ最高の戦場ですよ」

「…」

そうなんだけど。

でも、わざわざ口に出すなって。

「皆さんが緊張しているようだから、少しでも緊張感ほぐしておこうと思って」

心まで読んでくるしさ。 

「まー、いかに野蛮な暗殺組織と言えど、挨拶もなしにいきなり襲い掛かってはこな、」

「ナジュさん!」

「!!」

茂みの中から、鋭い刃をしたクナイが、ナジュの首を目掛けて飛んできた。

咄嗟に天音が防御壁を展開していなかったら、今頃ナジュの首にブスリと、クナイが突き刺さっていたことだろう。

一同、戦慄。

「…襲い掛かって来るとは。話通じない系ですね」

「…だな」

間違いない。

気配を消し、木々の間や茂みの中に潜んでいる。

敵が何人いるのか、何処にいるのかも分からない。

でも、確かにいるのだ。

俺達は緊張感を高め、互いに周囲を見渡した。

すると。

「…そう怯えるな」

「…!!」

暗闇の中から、ゆらりと姿を現した。

「…頭領様…」

すぐりが、思わずポツリとそう溢した。

そう、頭領。

この男こそが。

『アメノミコト』頭領、鬼頭夜陰である。

…いきなり、真打ち登場って訳か。
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