神殺しのクロノスタシスⅢ
「花曇すぐり。貴様は黒月令月を目の敵にし、敵対心を燃やしていたようだが…。儂にしてみれば、赤子が大人を睨んでいるようなもの。所詮貴様など、黒月令月の足元にも及ばん、二流三流の暗殺者だ」

「…」

「暗殺者として儂が期待していたのは、黒月令月だけだ。貴様など、ただの殺したがりの餓鬼に過ぎん。それでも貴様と『玉響』を派遣したのは、精々自爆でもして、黒月令月を巻き添えに出来れば御の字と思ったからだ」

すぐりが。

顔面蒼白になって、後ずさった。

「嘘だ…」

ポツリと、そう呟いて。

すぐりは、この男に…『アメノミコト』の頭領に、認められる為に生きていた。

令月を殺せば、自分も認められる。こんな男にでも、自分を価値ある者と認めてくれることを信じて、自爆までしようとした。

それなのに。

最初から、この男は。

暗殺が成功しようが、失敗しようが、すぐりを認めるつもりなんてハナからなかった。

すぐりの思いを、認められたいという気持ちを、利用していたに過ぎない…。

「案の定、貴様は役立たずだったな。『八千代』の足元にも及ばん、三流暗殺者。そんな貴様が、何故まだ生きている?任務も果たせず、何の役にも立たず、何一つ為すことの出来ないクズが、何故恥を晒してまだ生きている?」

「…!」

「恥を知れ、この痴れ者が。任務も果たせず生き恥を晒すくらいなら、今すぐここで腹を切って死ね」

すぐりは、震えながら後ずさり。

そのまま、崩れ落ちそうになった、そのとき。

「…『八千歳』は役立たずなんかじゃない」

令月だった。

令月は、かつての上司であった鬼頭夜陰に、真っ向から向き合った。
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