神殺しのクロノスタシスⅢ
すぐりと二手に分かれた俺は、水色の手裏剣を避けながら、水色を追い掛けた。

森の中を縦横無尽、より鬱蒼と茂った森の奥に。

シルナ達と離れるのは本意ではないが、確実に水色を仕留める為、シルナ達にはしばし、頑張ってもらうしかない。

暗殺者共は、こういう森の中はお得意の戦場。
 
だが俺達魔導師にとっては、やりにくいことこの上ない。
 
それでも俺は、足を止めることなく追い続けた。

先程までのように、闇雲に追いかけるのではない。
 
茂った木々の隙間、僅かなそのスペースに。

すぐりの張った、糸がピンと伸びていた。

俺はその、すぐりの張った糸を足場にして、足場が敷かれている場所を辿るようにして、水色を追いかけていた。  

すぐりの糸は、全てを計算したように張り巡らされていた。 

おまけにこの糸、細い癖に、強度はかなりのもので。

俺が足場にして、思いっきり蹴飛ばしても、全然千切れない。

むしろ、蹴れば蹴るほど、バネのように俺を跳ね飛ばし、加速を助長してくれている。

あの厄介な手裏剣も、格段に避けやすくなった。

逃げ回る水色との距離も、徐々に縮まりつつあった。

水色が、焦っているのが分かった。

手裏剣使いの水色は、接近されたら圧倒的に不利になる。

一瞬、今時魔法で超加速をかけて、一気に距離を詰めようかと思った。

だが、俺はすぐにその浅慮を却下した。

距離が縮まれば縮まるほど、水色は俺の時魔法を強く警戒しているだろうし。

何より、それはすぐりと立てた作戦に反する。

あくまで、すぐりの作戦通りに行く。

そして、その作戦が。

今、実を結ぼうとしていた。

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