神殺しのクロノスタシスⅢ
…この男をここまで追い詰めるのに、どれだけ苦労したことか。
手間かけさせやがって。
「今、お前の首を狙ったら…まだ隠れてるお前の手駒が、お前を助けに入るのか?」
「…」
「それともあれか。また『奴らは所詮四天王の中でも最弱』とでも言ってみるか?」
言えないだろう。
だって四天王最弱は、この間のイーニシュフェルト魔導学院襲撃の際に、攻めてきた暗殺者。
あれらが最弱だとしたら、今回のレインボー集団は、確かにあれらよりは強かった。
つまり、四天王の中でも真ん中、くらいには強い手駒のはずだったのだ。
しかしそれすらも、俺達には届かなかった。
それでジジィ、守られてるだけで、自分が血を流すことなんて、一つも考えてない糞ジジィ。
お前はこの期に及んで、どうするつもりなんだ?
「…良いだろう」
鬼頭は、偉そうにそう言った。
「黒月令月、花曇すぐり。今回は、貴様らの処分を見逃してやる」
「…」
「儂の気が変わらん内に、疾く失せることだ。貴様らの顔など、もう見たくもない…」
「…おい、糞ジジィ」
さっきまでも、充分俺を苛立たせてくれたもんだが。
今回は、また更にそれを上回る台詞をありがとう。
「それはこっちの台詞だ。てめぇ、自分の立場が分かってるのか?」
「…」
「…ナジュ。この男、まだ暗殺者を隠してるのか?」
ナジュに尋ねると、言葉の出ない彼は首を横に振った。
成程。
つまりお前は今、孤立無援な訳だ。
それが何を意味するか、分かるな?
…貴様の、裁きのときだ。
俺は、一歩、二歩と鬼頭夜陰に歩み寄った。
俺の目には、忌々しい鬼頭の顔しか見えていなかった。
故に、俺は知らなかった。
「…」
読心魔法で真実を知り、ナジュは、懐から紙とペンを取り出し、何かをさらさらと書きつけ。
それを、令月に渡した。
「…そう」
令月は、特に驚くこともなく、小太刀を両手に構えた。
そうとも知らず、俺は鬼頭夜陰に杖を向けた。
「…死んで、自分が駒にした命達に謝ってこい」
「ま、待て。儂を殺せば、貴様らは厄介なことになるぞ」
「あ?」
見苦しくも。
鬼頭は、命乞い作戦に出た。
「儂を殺せば、ジャマ王国本国にいる、『アメノミコト』本隊がルーデュニア聖王国に攻めてくる。国同士を巻き込んだ、戦争になるぞ」
「…」
俺達だけなら、いくらでも戦ってやるが。
そのせいで、無辜のルーデュニア国民が巻き込まれるのは、確かに俺としても不本意。
だが、それでも…。
「ここで儂をみ、見逃せば、今後『アメノミコト』の人間がルーデュニアの国境を越えることはない。それを約束しよう。だから…」
「アホ抜かせ。お前の言うことなんて、信じられる訳、」
と、俺が言ったその瞬間。
ギロチンを越える速度で、令月の小太刀が迫った。
気がついたときには、鬼頭の首が、ころん、と地面に転がり。
切断面から、血飛沫が舞っていた。
「…!?令月?」
「…」
令月の目は冷たく、鬼頭の亡骸を見下ろしていた。
かつて自分を洗脳し、痛めつけ、利用した男を、自分の手で殺したかったってことか?
それとも…。
「…羽久」
「令月…お前」
「これ、本物じゃないんだって」
「…!?」
俺はしばしの間、その言葉の意味が分からなかった。
本物じゃない…だって?
手間かけさせやがって。
「今、お前の首を狙ったら…まだ隠れてるお前の手駒が、お前を助けに入るのか?」
「…」
「それともあれか。また『奴らは所詮四天王の中でも最弱』とでも言ってみるか?」
言えないだろう。
だって四天王最弱は、この間のイーニシュフェルト魔導学院襲撃の際に、攻めてきた暗殺者。
あれらが最弱だとしたら、今回のレインボー集団は、確かにあれらよりは強かった。
つまり、四天王の中でも真ん中、くらいには強い手駒のはずだったのだ。
しかしそれすらも、俺達には届かなかった。
それでジジィ、守られてるだけで、自分が血を流すことなんて、一つも考えてない糞ジジィ。
お前はこの期に及んで、どうするつもりなんだ?
「…良いだろう」
鬼頭は、偉そうにそう言った。
「黒月令月、花曇すぐり。今回は、貴様らの処分を見逃してやる」
「…」
「儂の気が変わらん内に、疾く失せることだ。貴様らの顔など、もう見たくもない…」
「…おい、糞ジジィ」
さっきまでも、充分俺を苛立たせてくれたもんだが。
今回は、また更にそれを上回る台詞をありがとう。
「それはこっちの台詞だ。てめぇ、自分の立場が分かってるのか?」
「…」
「…ナジュ。この男、まだ暗殺者を隠してるのか?」
ナジュに尋ねると、言葉の出ない彼は首を横に振った。
成程。
つまりお前は今、孤立無援な訳だ。
それが何を意味するか、分かるな?
…貴様の、裁きのときだ。
俺は、一歩、二歩と鬼頭夜陰に歩み寄った。
俺の目には、忌々しい鬼頭の顔しか見えていなかった。
故に、俺は知らなかった。
「…」
読心魔法で真実を知り、ナジュは、懐から紙とペンを取り出し、何かをさらさらと書きつけ。
それを、令月に渡した。
「…そう」
令月は、特に驚くこともなく、小太刀を両手に構えた。
そうとも知らず、俺は鬼頭夜陰に杖を向けた。
「…死んで、自分が駒にした命達に謝ってこい」
「ま、待て。儂を殺せば、貴様らは厄介なことになるぞ」
「あ?」
見苦しくも。
鬼頭は、命乞い作戦に出た。
「儂を殺せば、ジャマ王国本国にいる、『アメノミコト』本隊がルーデュニア聖王国に攻めてくる。国同士を巻き込んだ、戦争になるぞ」
「…」
俺達だけなら、いくらでも戦ってやるが。
そのせいで、無辜のルーデュニア国民が巻き込まれるのは、確かに俺としても不本意。
だが、それでも…。
「ここで儂をみ、見逃せば、今後『アメノミコト』の人間がルーデュニアの国境を越えることはない。それを約束しよう。だから…」
「アホ抜かせ。お前の言うことなんて、信じられる訳、」
と、俺が言ったその瞬間。
ギロチンを越える速度で、令月の小太刀が迫った。
気がついたときには、鬼頭の首が、ころん、と地面に転がり。
切断面から、血飛沫が舞っていた。
「…!?令月?」
「…」
令月の目は冷たく、鬼頭の亡骸を見下ろしていた。
かつて自分を洗脳し、痛めつけ、利用した男を、自分の手で殺したかったってことか?
それとも…。
「…羽久」
「令月…お前」
「これ、本物じゃないんだって」
「…!?」
俺はしばしの間、その言葉の意味が分からなかった。
本物じゃない…だって?