神殺しのクロノスタシスⅢ
「…で、まぁ話がちょっと逸れましたが」
「…」
「ヴァルシーナが『アメノミコト』に接触したのは、学院襲撃の直後だと思うんですよね」
…同感だ。
あの学院襲撃で、『アメノミコト』は知っただろう。
イーニシュフェルト魔導学院には、厄介な読心魔法の使い手がいる。
あれを何とか対策しないことには、こちらは手玉に取られるばかりだ、と。
何せ、どんなに立派な作戦を立てても、それがこちらに筒抜けじゃ、意味がないからな。
「『アメノミコト』は、ナジュの読心魔法対策に困ってた。そこに、事情を知ったヴァルシーナが、渡りに船とばかりに現れた…って訳か」
「でしょうね。あの女のことだから、機を伺っていたんでしょう」
…成程ね。
『アメノミコト』が、ナジュの読心魔法に翻弄される様を、散々高みの見物し。
奴らが困っているところに、都合良く駆けつけて、手を組もうと提案した。
丁度『アメノミコト』が手をこまねいていた、ナジュの読心魔法対策の方法を手土産に。
「すぐりさんが、読心魔法対策の訓練を始めたのはいつです?」
「…学院襲撃…。『八千代』奪還作戦から、ほぼ一ヶ月たった頃かなー…確か」
「やっぱり。時期的にも一致してますね」
…本当に狡猾な女だな。
だが、お互いの利害は一致している。
『アメノミコト』は、読心魔法対策法を知りたがっていた。
ヴァルシーナは、再びシルナの首を獲る為の戦力を欲しがっていた。
お互いが求めているものを、お互いが持ち合わせていた。
だったら手を組み、共同戦線を張るのも頷ける。
「まぁ、僕の読心魔法対策だけじゃないと思いますよ。ヴァルシーナが知っている情報は、『アメノミコト』の情報とは桁違いに多いでしょうから」
「…」
…だろうな。
ヴァルシーナは、『カタストロフィ』のリーダーだった。
かつての部下を通して、彼らが聖魔騎士団の魔導師と戦ったときの情報も、勿論知っているし。
何百年、いや…何千年も前から、あの女は。
ルーデュニア聖王国内外に、至るところに根を張り、パイプを繋ぎ。
シルナや、イーニシュフェルト魔導学院に関する情報を、さながら探偵のごとく探りまわっているはず。
『アメノミコト』が俺達の敵に回ったのは、ごく最近のこと。
それに対しヴァルシーナは、大昔から、延々と俺達を監視し、睨みつけて離さなかった。
持っている情報の多さは、『アメノミコト』なんかとは段違いだ。
…とはいえ、『アメノミコト』も暗殺専門組織。
奴らの情報網も、ヴァルシーナに勝るとも劣らないだろうが…。
「ヴァルシーナは、僕の読心魔法対策と、他に持っている我々についての情報を一つ二つちらつかせるだけで良い。それだけで、『アメノミコト』にとっては充分、食いつくに足る餌だったんでしょう」
…成程ね。
故に、すぐりは読心魔法対策を完璧にして挑んできた上。
先日挑戦状を受けて戦った、『終日組』の暗殺者達もまた、心を閉ざす方法を身に着けていた。
「…じゃ、すぐりはヴァルシーナに会ったことがあるのか?あいつに直接、読心魔法対策を習って…」
「まさか。間接的に、って言ったじゃん。俺にあの方法を教えたのは、元々『アメノミコト』にいる暗殺者の一人だったよ」
あ、そうか…。そう言ってたな。
「多分ヴァルシーナは、別の人に最初に教えて、それを教わった人がすぐりさんに教え、また別の人に教え…。そうやって伝わっていったんでしょう」
「ま、教えられた人間全員が、会得出来た訳じゃないみたいだけどー。むずかしーからね、あれ」
当たり前だ。
万人に出来ることなら、ナジュだってとっくに気づいていたはずだ。
「…」
「ヴァルシーナが『アメノミコト』に接触したのは、学院襲撃の直後だと思うんですよね」
…同感だ。
あの学院襲撃で、『アメノミコト』は知っただろう。
イーニシュフェルト魔導学院には、厄介な読心魔法の使い手がいる。
あれを何とか対策しないことには、こちらは手玉に取られるばかりだ、と。
何せ、どんなに立派な作戦を立てても、それがこちらに筒抜けじゃ、意味がないからな。
「『アメノミコト』は、ナジュの読心魔法対策に困ってた。そこに、事情を知ったヴァルシーナが、渡りに船とばかりに現れた…って訳か」
「でしょうね。あの女のことだから、機を伺っていたんでしょう」
…成程ね。
『アメノミコト』が、ナジュの読心魔法に翻弄される様を、散々高みの見物し。
奴らが困っているところに、都合良く駆けつけて、手を組もうと提案した。
丁度『アメノミコト』が手をこまねいていた、ナジュの読心魔法対策の方法を手土産に。
「すぐりさんが、読心魔法対策の訓練を始めたのはいつです?」
「…学院襲撃…。『八千代』奪還作戦から、ほぼ一ヶ月たった頃かなー…確か」
「やっぱり。時期的にも一致してますね」
…本当に狡猾な女だな。
だが、お互いの利害は一致している。
『アメノミコト』は、読心魔法対策法を知りたがっていた。
ヴァルシーナは、再びシルナの首を獲る為の戦力を欲しがっていた。
お互いが求めているものを、お互いが持ち合わせていた。
だったら手を組み、共同戦線を張るのも頷ける。
「まぁ、僕の読心魔法対策だけじゃないと思いますよ。ヴァルシーナが知っている情報は、『アメノミコト』の情報とは桁違いに多いでしょうから」
「…」
…だろうな。
ヴァルシーナは、『カタストロフィ』のリーダーだった。
かつての部下を通して、彼らが聖魔騎士団の魔導師と戦ったときの情報も、勿論知っているし。
何百年、いや…何千年も前から、あの女は。
ルーデュニア聖王国内外に、至るところに根を張り、パイプを繋ぎ。
シルナや、イーニシュフェルト魔導学院に関する情報を、さながら探偵のごとく探りまわっているはず。
『アメノミコト』が俺達の敵に回ったのは、ごく最近のこと。
それに対しヴァルシーナは、大昔から、延々と俺達を監視し、睨みつけて離さなかった。
持っている情報の多さは、『アメノミコト』なんかとは段違いだ。
…とはいえ、『アメノミコト』も暗殺専門組織。
奴らの情報網も、ヴァルシーナに勝るとも劣らないだろうが…。
「ヴァルシーナは、僕の読心魔法対策と、他に持っている我々についての情報を一つ二つちらつかせるだけで良い。それだけで、『アメノミコト』にとっては充分、食いつくに足る餌だったんでしょう」
…成程ね。
故に、すぐりは読心魔法対策を完璧にして挑んできた上。
先日挑戦状を受けて戦った、『終日組』の暗殺者達もまた、心を閉ざす方法を身に着けていた。
「…じゃ、すぐりはヴァルシーナに会ったことがあるのか?あいつに直接、読心魔法対策を習って…」
「まさか。間接的に、って言ったじゃん。俺にあの方法を教えたのは、元々『アメノミコト』にいる暗殺者の一人だったよ」
あ、そうか…。そう言ってたな。
「多分ヴァルシーナは、別の人に最初に教えて、それを教わった人がすぐりさんに教え、また別の人に教え…。そうやって伝わっていったんでしょう」
「ま、教えられた人間全員が、会得出来た訳じゃないみたいだけどー。むずかしーからね、あれ」
当たり前だ。
万人に出来ることなら、ナジュだってとっくに気づいていたはずだ。