神殺しのクロノスタシスⅢ
…そうだっけ?

「俺が助けに入らなかったら、水色の手裏剣に当たってたよ?」

「あ、あぁ…」

そう…だったな。

「あ、さては手裏剣馬鹿にしてるー?『アメノミコト』の手裏剣は、折り紙や玩具のそれとは段違いだよ?」

「分かってるって…。悪かったよ。助けに入ってくれてありがとう」

「どーいたしまして」

いくら、ヴァルシーナが横槍を入れてきたとはいえ。

戦闘中にボーッと突っ立ってるなんて。

しかも、『終日組』の暗殺者相手に。

自殺行為じゃないか。危なかった。

油断したつもりはなかったんだが…。

…って言うか、俺、あのとき…。

と、考えようとした瞬間。

下校時刻を告げるチャイムの音が、校舎内に鳴り響いた。

「おっと…。つい話し込んじゃったね。もうこんな時間だ」

「生徒二人は、学生寮に帰りなさい。もう脱走するんじゃありませんよ」

「だって、どうしよう『八千歳』」

「大丈夫だよ。見つからなければノーカン」

ノーカンじゃねぇだろ。

脱走をするな。

「あー、僕もさっさと休みたいですが、ミンチになってた間の授業の引き継ぎ、しないといけないんですよねー。面倒くさ」

「自業自得です」

ばっさりと切り捨てるイレースである。

「私は医務室に行って、天音さんに会議の内容を話してきます」

「あ、じゃあ私もついていくよ。熱中症の生徒、大丈夫かどうか見てこなくちゃ」

生徒が心配らしいシルナ。

天音が看てるから、大丈夫だと思うけど。

自分の目で確かめなければ、安心出来ないんだろうな。

生徒二人は、窓から飛び降りて学生寮に戻り(普通に帰れ)。

イレースとシルナは、二人して医務室に向かった。

で、残ったのは俺と…。

「…職員室行くんじゃないのか?ナジュ」

何故か、ナジュが足を動かさないまま、そこに立っていた。
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