神殺しのクロノスタシスⅢ
さっき、休んでた間の授業の引き継ぎするって、言ってたじゃん。

何で行かないんだ?

まさか、どうしても行きたくないとか、そんな我儘じゃないよな。

シルナじゃないんだから。

「あー、はい。実は、ちょっとあなたに、聞きたいことがあって」

は?

「聞きたいことって…何だよ?」

いくらでも、他人の心読み放題のお前が。

いちいち質問をしてくるとは、珍しいことある、

「隠し事してませんか?」

「…は?」

からかっているのか、冗談を言ってるのかと、一瞬思った。

しかし。

ナジュの目は、真剣そのものだった。

隠し事…って。

「…おいおい。何言ってるんだ」

「…」

「お前相手に、隠し事なんて。しようと思っても出来ないだろ。俺はすぐりみたいに、心の仮面の被り方なんて知らないぞ」

「…ですよね」

ナジュは、自分に言い聞かせるように呟いた。

…?

「…お前の方こそ、また読心魔法の訓練だ、とか言って、コソコソ危ない特訓してんじゃないだろうな?」

俺は、お前の隠し事の方が余程心配だよ。

また一ヶ月以上、白雪姫みたいに眠られたら、堪ったもんじゃない。

もうあんな思い、二度と御免だぞ。

「してませんよ…。失敬な」

「そうか。なら良い」

「じゃ、職員室行くかー…。あー面倒臭い。僕も学院長みたいに、分身出来ないかなー」

やめてくれ、冗談じゃない。

一人でもこんなに厄介なのに、お前まで分裂されて堪るか。

…全く…。

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