神殺しのクロノスタシスⅢ
「何とかしないと…。何すれば良いの俺…?どうやったらツキナの笑顔を守れる…?」

「…」

「深夜に園芸部の畑に忍び込んで、ナスだけ根っこから引っこ抜くか…?」

ナス泥棒。

「それとも枯葉剤で…」

ナス殺害犯。

「そんなことしたら、『ナスが枯れちゃったよ〜』って泣かれません?」

「あぁぁそうだった!それじゃ駄目だ!ツキナの笑顔を守りたい!」

「…」

「それとも、えぇと、他に方法…」

ぶつぶつと呟いて、頭を悩ませているようだが。

「ねぇ、すぐりさん」

「…何だよ」

「分かってるんじゃないですか?本当は。あなたに取れる選択肢なんて、二つしかないこと」

「…!」

その顔。

図星だな。

そう。方法はもとより、二つしかない。

すぐりさんだって、馬鹿じゃない。もう分かっているだろう。

とっくに。始めから。

あれこれグチグチ言っても、悶々悶えても。

すぐりさんに取れる選択肢は、二つだけ。

素直にツキナさんに、「俺ナス嫌いなんだ。ごめん」と告白するか。
 
あるいは。

ナスを克服し、無理矢理にでも笑顔で飲み込むか。

以上。
 
このどちらかを選ぶしかないのである。

どちらにしても、すぐりさんにとっては、辛い選択肢だろう。
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