神殺しのクロノスタシスⅢ
「暇だ〜。やることな〜い…」

学院長の癖に、暇だ〜ってお前…。

やることがない訳じゃない。

やりたいことがないだけだろ。

「お前も、イレースみたいに書類仕事やれよ」

「それはさ〜…。それは…分身にやらせるよ」

分身に頼るな。自分でもやれ。

「令月君やすぐり君に、色々勉強教えてあげようと思ってたんだけどなぁ…」

「あぁ…」

成程、それで拗ねてるのか。

あの二人、シルナのこと完全スルーだもんな。

令月はトレーニングに忙しく、すぐりはガーデニングに忙しい。

そりゃしょうがない。

誰だって、外が暑かろうが。

おっさんの相手をするより、青春の汗を流した方が楽しいに決まってる。

余程充実した夏休みになるよな。

「羽久もさ〜…。また私に失礼なこと考えてる気がするし…」

被害妄想だな。

「イレースちゃんは相変わらずだし、天音君も忙しそうだし…」

「…」

「ナジュ君は、私が大事に取っておいたアイスを摘み食いするし!酷いと思わない?」

「…まぁ…」

酷いって言うか…。

あいつはもう…そういう奴って言うか…。

…クビにしても良いと思うよ?

「だから暇!相手してよ羽久〜」

「あーもう、うるさいな…」

何が嬉しくて、俺がこのおっさんの相手をしなければならないのか。

冗談じゃない。

「お前も本を読めよ。レティシアが選んでくれた本」
 
「それはもう読んだ。分身が」

自分で読めって。

一応シルナ分身は、どれも本体と思考を共有しているので。

シルナ分身が読んだ本の内容は、シルナ本体にも届いているのだが。

だからって…なぁ?

「暇だな〜…。あっ、そうだ」

「…何だよ」

そのハッピーな脳みそで、何を思いついたんだ?

「王都にいる生徒の家に、突撃家庭訪問してみない?元気にしてるーっ!?って!」

名案みたいな顔して、何馬鹿なこと言ってるんだ。

生徒と保護者、大迷惑。

想像もしてみろ。一家団欒を楽しんでるときに、頭がハッピーな学院長が、新聞部三人組のノリで突撃してきたら。

迷惑以外の何物でもない。

大丈夫だ生徒達。シルナが本当にそんな馬鹿なことしようとしたら、責任持って俺が止めるから。

安心してくれ。

「アホ抜かせ。駄目だ」

「えぇ〜…」

えぇーじゃねぇ。

当たり前だろ。

「んん〜。じゃあ、そうだなー…。何しようかな…」

「だから、お前もイレースみたいにしご、」

「あ、そうだ!生徒が駄目なら、聖魔騎士団の皆のところに遊びに行こう!」

…は?
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