神殺しのクロノスタシスⅢ
…数時間後。

俺とシルナは、アトラスとシュニィの家…ルシェリート一家の家にいた。

…さっきから、ずっと思ってるけど。

何で俺、ここにいるんだろう?

しかし。

「お待たせしました、学院長先生、羽久さん」

「あ、シュニィちゃん!」

ティーカップの乗ったお盆を持ったシュニィが、客間に戻ってきた。

「これ、頂き物なんですけど…良かったらどうぞ」

更に、美味しそうなマドレーヌまで。

「ありがとー!」

シルナ、歓喜。

更に。

「おとーしゃま、アイナもたべるー」

「よしよし、アイナにもあげるぞ〜」

ルーデュニア1の親馬鹿、アトラスが。

愛娘のアイナを膝の上に乗せて、その小さな手にマドレーヌを握らせた。

そして、そのアイナの膝の上には。

もっと小さな赤ん坊、アイナの弟でルシェリート一家の長男であるレグルスが、ちょこんと座っていた。

出たよ。親子マトリョーシカ。

しかも。

「はいっ、レグルスもどーぞ〜」

アイナはマドレーヌをはんぶんこにして、レグルスに食べさせようとしていた。

微笑ましくてヤバい。

俺の横でマドレーヌをもぐもぐ貪ってるおっさんの、千倍は可愛い。

「アイナったら。レグルスはまだ食べられませんよ」

シュニィは、苦笑いで娘を諌めた。

しかしまぁ、あれだな。

「しばらく見ない間に、また大きくなったな。二人共。アイナも背ぇ伸びてるし、レグルスなんて、この前見たときはまだ首も座ってなかっ、」

「だろう!?なんと言ってもうちの子達は、優秀なシュニィの血を引いてるからな!」

俺、まだ喋ってる途中だったんだけど。

食い気味に、アトラスが割り込んできた。

めっちゃ鼻息荒くして。

「あの柱を見てくれ!アイナの身長を記録してるんだがな、もう目ざましい速度で成長してるんだ!」

アトラスは、リビングの大きな柱を指差した。

よくあるだろう?子供がどれだけ大きくなったか測る為に、家の柱に傷をつけて、年齢を書き込む習慣。

あれを、ルシェリート家でもやってるらしい。
 
の、だが。

ルシェリート家の柱は、既に傷まみれだった。

どういう頻度で測ってるの?

年単位どころか、日付単位で測ってそう。

そこに、もうすぐレグルスが加わるようになるんだろう?

ルシェリート家の柱、もうボロボロ。

「そしてなんと、レグルスの身長体重は、平均より高いそうだ!凄いと思わないか!?」

「あ、あぁ…うん…」

「おまけに二人共美形だ!うちの子達は二人共優秀だな!さすが、世界で一番賢くて、世界で一番美人なシュニィの子供だ」

と、我が子自慢をしながら。

ついでに、嫁自慢も存分に熱く語る。

「…」

チラリとシュニィを見ると、あまりの恥ずかしさに顔を真っ赤にして、そっぽを向いていた。

…うん。

まぁ、傍から見たら微笑ましいから。うん。

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