神殺しのクロノスタシスⅢ
相変わらず、ルシェリート夫妻が仲良しであることが分かった。

この二人のことは、二人がまだ学生だった頃からよく知っている。

…盗み見させてもらったくらいだからな。

あのときは本当ごめん。

だから、未だに相思相愛で、こちらとしても嬉しい。

シルナなんて、見てみろ。

「よしよし、アイナちゃんもレグルス君も可愛いね〜」

完全に、孫を可愛がるおじいちゃん。

シルナ…。お前も歳を取ったな…。

「羽久が、私に失礼なこと考えてる気がする…」

「気のせいだ」

俺は事実を述べたまでだから。

すると。

「アイナちゃんは、大きくなったら何になりたいの?」

シルナが、アイナにそう尋ねた。

お、良い質問だ。

アイナもレグルスも、優秀な魔導師であるシュニィの子供だ。

まだ幼いから、魔導適性の有無は分からないが。

魔導適性の有無は、遺伝が関係していると考えられている。

故に、二人共魔導適性に恵まれている可能性は、充分ある。

とはいえ、遺伝だけが魔導適性の有無を左右する訳ではないし。

第一、父親のアトラスは、保有魔力量は多いのに、魔導適性はない。

だから、いくら母親のシュニィが優秀な魔導師でも、二人の子供はどちらも魔導適性なし、の可能性もあるのだ。

まぁ、魔導師の子供だからって、絶対魔導師にならなければならない訳でもなし。

シュニィもアトラスも、例え二人に魔導適性があってもなくても、子供達への愛情が変わることはないだろう。

それどころか、魔導適性があったとしても、必ずしも魔導師になる道を強制したりもしないだろう。

魔導適性なんて関係ない。あっても良いしなくても良い。あったとしても、必ずしもそれを活かす必要はない。

子供達が元気に、健やかに成長し。

自分の人生を自分で選び、そして幸せになることだけを望んでいるはずだ。

もし将来、アイナかレグルスに魔導適性がないと判明したとして。

「あの子、魔導部隊大隊長の子供の癖に、魔導適性ないらしいよw」なんて陰口が、アトラスの耳に届いてみろ。

地獄の果てまで追いかけられるぞ。

親の人生がどうあれ、子供は子供の人生がある。

好きなように生きれば良い。

シュニィもアトラスも、二人が元気に育ち、幸せに暮らすこと以上のものを、求めたりはしないだろう。

だから、アイナもレグルスも、気にせず自分の選んだ道を、

「アイナ、おとうしゃまみたいな『けんし』になりたい!」

…道を。

歩けば良い…と、思ったのだが?

目をキラキラと輝かせて宣言するアイナに、アトラス以外の全員が、一瞬固まった。
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