神殺しのクロノスタシスⅢ
クュルナが調べてくれたお陰で、分かった。

ナジュは、読心魔法において、人類未踏の段階に足を踏み入れているのだ。

本人に自覚があるのかは知らないし、多分自覚してないが。

未だかつてない、優れた読心魔法の使い手…ってことか。

だからこそ、これからどうなるのか分からない。

「あの読心魔法は、ナジュさんの天性のものですし、何百年と特に問題もなく使用してこられた訳ですから、そこは安心して良いと思いますが…」

「…」

「…その、先日、ああいうことがあったばかりですし…」

クュルナは、言いにくそうに口に上らせた。

…そうだな。

大変だったな、あれは。

「複数人同時読心は、歴史の浅い読心魔法の中でも、未だかつてない試みです。使用に関しては…慎重になった方が賢明かと」

…だな。

一言一句、ナジュに聞かせてやりたいよ。

つーかあいつ、危ないと分かっててやりやがったからな。

思い出すだけで、やっぱりイラッとする。

「分かった。伝えとくよ」

脅す感じで伝えとく。

そうとでも言わなきゃ、絶対言うこと聞かないから。

「ありがとうな、クュルナ。手間かけさせて」

「いえ…。羽久さんの…皆さんの役に立てるなら」

それは心強いな。

「悪いけど、また何かあったら頼むな」

「はい。何でも任せてください」

全く、頼れる仲間に恵まれたものだ。

いつもいつも頼りっぱなしで、申し訳ない。
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