神殺しのクロノスタシスⅢ
「す、すすすぐり君!?何でそんな酷いことするの!?」

「何が?」

「ら、ラズベリーを失ったラズベリーチーズケーキなんて…ただのチーズケーキだよ!」

「良いじゃん、ただのチーズケーキで」

あっけらかんとして言われた。

いや、チーズケーキとして食べても、それはそれで美味しいんだけど。

でもそうじゃないんだよ。

今日はカツカレーだよー、って言われてカツカレー出された瞬間、カツだけ強奪されてみ?

大乱闘勃発するよ?

そりゃカレーの部分だけ食べても美味しいけど、でもそういう問題じゃないだろう。

それなのに令月は、カツを失ったカレーの部分のみ…チーズケーキの部分のみを、黙々と食べていた。

健気。可哀想。

「何でそんな悪いことするの!?」

「『八千代』が嫌いだから」

物凄くシンプルな返答をありがとう。

そう開き直って言われてしまっては、こちらとしては何も言えない。

しかし。

「駄目でしょ!嫌いだからって、そんな悪いことしたら…」

「したら、どうなるの?」

「えっと…その…そう。私が怒るよ!私が!」

…シルナが?

「ふーん。いーよ、はいどーぞ怒って」

「えっ」

怒って良いと言われて、もごもご困り出すシルナ。

…あのな、シルナ。

怒るよ!って威厳を示すなら、それなりの態度で怒ってくれ。

すると。

「よし、じゃあ怒るからね…泣いて謝っても知らないよ!」

「うん、どーぞ」

「うーんと、あの、すぐり君はあの…。そんな悪いことしちゃ…めっ!!」

…。

…。

…まぁ、そんなことだろうとは思った。

「…目?」

首を傾げるすぐり。

めっ!の文化が通じない、元暗殺者組。

何なら、令月もよく分かってないらしく、首を傾げている。

本来なら、お前が怒るべきなんだろうけどな。

お前の代わりに、シルナが怒ってるんだよ。

「目がどーしたのさ、学院長」

「え?いや、だから、その…お仕置きをね?」

「お仕置き?お仕置きって言ったら…指を折るんじゃないの?爪剥がしたり」

それはもう、お仕置きじゃない。

拷問。

しかし、『アメノミコト』で過酷な幼少期を過ごした二人にとっては、それが普通の感覚のようで。

「いーよ、指くらいいくらでも折って。どうせ全部折ったって、20本しかないんだから余裕」

何が?

「えっ、な、何でそんな怖いこと…」

「『八千歳』。目って言ったんだから、きっと目を抉り出すってことなんだよ」

元暗殺者組が、おかしな方向に話を進めている。

「あー成程ねー。目?いーよいーよ。二つあるし。一個くらいなくなっても。それに時間がたてば再生するし。何なら二つあげても」

「ちょっと何それ怖い!やだ!目は大事にして!」

本当それな。

駄目だ。叱ろうとしても、全然叱れない。
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