神殺しのクロノスタシスⅢ
「ちょこまかと…ゴキブリみたいな奴だよ」
と、悪態をつくすぐり。
「ごめんね。でも、簡単にやられたくはないから」
「簡単に引っ掛かった癖に」
「もう引っ掛からないよ」
「へーぇ。言ったね?」
第2ラウンド、スタート。
すぐりのワイヤーが、更に速度を増して襲い掛かる。
嘘だろ。あれ、まだ速度上がるのかよ。
おまけに令月は、それさえ想定済みとばかりに、鮮やかにかわす。
透明で見えないが、恐らく、あのワイヤーの間にも、糸が仕込まれているのだろうが。
令月は引っ掛からない。宣言通りに。
そのまま、ワイヤー攻撃を掻い潜って、再びすぐりの懐に入り込む。
令月の木刀が、すぐりの喉元を捉えた。
お、おい。だからお前ら、殺し合いじゃないって分かってるよな?
しかし。
懐に入られた途端。
すぐりが、宙を舞った。
「!?」
別に、令月に蹴飛ばされたのではない。
自分から飛んだのだ。
すぐりにとっては、令月が自分の懐に入ってくるのは想定内。
それに備えて、すぐりは緊急避難用の足場を、糸で作っていたのだ。
その糸で、すぐりは空中に逃げた。
上を見上げて、ようやく理解した。
この稽古場。このフィールドは。
既に、すぐりが支配している。
執拗なワイヤー攻撃、あれは囮。目眩ましだ。
その間にすぐりは、空中至るところに、蜘蛛の巣のように糸を張り巡らせ。
自分だけのフィールドを、作り上げていたのだ。
恐ろしい。あの糸魔法。
縦横無尽過ぎて、ついていけな、
「!」
それなのに。
令月は顔色一つ変えず、床を思いっきり蹴って、すぐりが立っている空中に飛んだ。
力魔法だ。
力魔法で、己の脚力を飛躍的に上昇させ。
木刀を振るって、すぐりが張り巡らせた糸を断ち切りながら、自分も空中飛んだのだ。
いきなり空中戦、勃発。
だが。
同じ空中にいても、有利なのはやはり、すぐりの方だ。
令月は、壁や床を蹴って助走をつけなければ、空には飛べないが。
すぐりの方は、自分の張った糸で、自在に動き回れる。
だが、令月はそんな自分の不利を物ともせず。
糸を断ち切り、すぐりの足場をなくしながら、再び接近しようとした。
糸の足場がなくなれば、自然と地上戦に逆戻りすると踏んだのだ。
しかし、すぐりはあくまで、自分の得意なフィールドを崩すつもりはないらしく。
断ち切られた分の糸を張りながら、ワイヤーで牽制しつつ、令月からの距離を離していた。
ギリギリの攻防戦に、俺達が肝を冷やしていることも知らず。
それどころか。
「…気に入らないなぁ」
すぐりが、ポツリと呟いた。
…気に入らない?
…って、何が?
と、悪態をつくすぐり。
「ごめんね。でも、簡単にやられたくはないから」
「簡単に引っ掛かった癖に」
「もう引っ掛からないよ」
「へーぇ。言ったね?」
第2ラウンド、スタート。
すぐりのワイヤーが、更に速度を増して襲い掛かる。
嘘だろ。あれ、まだ速度上がるのかよ。
おまけに令月は、それさえ想定済みとばかりに、鮮やかにかわす。
透明で見えないが、恐らく、あのワイヤーの間にも、糸が仕込まれているのだろうが。
令月は引っ掛からない。宣言通りに。
そのまま、ワイヤー攻撃を掻い潜って、再びすぐりの懐に入り込む。
令月の木刀が、すぐりの喉元を捉えた。
お、おい。だからお前ら、殺し合いじゃないって分かってるよな?
しかし。
懐に入られた途端。
すぐりが、宙を舞った。
「!?」
別に、令月に蹴飛ばされたのではない。
自分から飛んだのだ。
すぐりにとっては、令月が自分の懐に入ってくるのは想定内。
それに備えて、すぐりは緊急避難用の足場を、糸で作っていたのだ。
その糸で、すぐりは空中に逃げた。
上を見上げて、ようやく理解した。
この稽古場。このフィールドは。
既に、すぐりが支配している。
執拗なワイヤー攻撃、あれは囮。目眩ましだ。
その間にすぐりは、空中至るところに、蜘蛛の巣のように糸を張り巡らせ。
自分だけのフィールドを、作り上げていたのだ。
恐ろしい。あの糸魔法。
縦横無尽過ぎて、ついていけな、
「!」
それなのに。
令月は顔色一つ変えず、床を思いっきり蹴って、すぐりが立っている空中に飛んだ。
力魔法だ。
力魔法で、己の脚力を飛躍的に上昇させ。
木刀を振るって、すぐりが張り巡らせた糸を断ち切りながら、自分も空中飛んだのだ。
いきなり空中戦、勃発。
だが。
同じ空中にいても、有利なのはやはり、すぐりの方だ。
令月は、壁や床を蹴って助走をつけなければ、空には飛べないが。
すぐりの方は、自分の張った糸で、自在に動き回れる。
だが、令月はそんな自分の不利を物ともせず。
糸を断ち切り、すぐりの足場をなくしながら、再び接近しようとした。
糸の足場がなくなれば、自然と地上戦に逆戻りすると踏んだのだ。
しかし、すぐりはあくまで、自分の得意なフィールドを崩すつもりはないらしく。
断ち切られた分の糸を張りながら、ワイヤーで牽制しつつ、令月からの距離を離していた。
ギリギリの攻防戦に、俺達が肝を冷やしていることも知らず。
それどころか。
「…気に入らないなぁ」
すぐりが、ポツリと呟いた。
…気に入らない?
…って、何が?