神殺しのクロノスタシスⅢ
…一時間後。

「どーだ後輩諸君。恐れ入ったか」

「口程にもありませんでしたね」

「くっそ〜…。何だこの化け物共め…」

「…大人気の欠片もない…」

…言われてるぞ、キュレム、ルイーシュ。

言って聞かせるより、まず実戦。

令月&すぐりペアは、早速キュレム&ルイーシュと戦闘訓練を行った。

十戦やって、十回負けた。

令月達、完敗である。

しかも、圧倒的完全敗北。

キュレムとルイーシュの、洗練された完璧な連携に、為す術なく一方的に負かされていた。

これだけ綺麗に負けたら、むしろスッキリするな。

「僕一人でも無理なんだから、『本職』の方々相手じゃ、そりゃボロ負けもしますよねぇ」

と、この一連の模擬戦闘を見ていた、ナジュの感想である。

まぁ、そうなんだけど。

二人一組での戦闘において、キュレムとルイーシュの横に出る者はいない。

そう言っても過言ではない。

そのくらい、この二人は熟練したペアなのだ。

付け焼き刃の令月達に、適う相手ではない。

これだけボロボロに負けて、落ち込んでなきゃ良いのだが。

「つーか、戦うまでもなく、勝手に自滅してくれるんじゃないですか?」

大人気の欠片もなく。

ルイーシュは、敗北した後輩達に言葉の暴力を浴びせかけた。

「戦ってると言うより、醜い足の引っ張り合いを見せられてる気分でしたし。何やってるんですかあなた達?綱引きならぬ、足引き?楽しかったです?」

やめろって。

本当に大人気ないな。

「まー、でも分からなくもない…。君達さぁ、いくら何でも、連携取れてなさ過ぎだよ」

キュレムまで。

まだ結成して数日なんだから、勘弁してやってくれと言いたいところだが…。

「あのねー、貶すのは結構だけど、何処がどう悪いのか、具体的に言ってくれない?」

苛ついた様子のすぐりが、苛立ち紛れにそう言うと。

じゃあ容赦なく、とばかりにキュレムが答えた。

「まずね、戦いながら喋り過ぎ。あれだけベラベラ喋ってたんじゃ、敵に作戦筒抜けだよ」

「…」

…そうだな。

「そこを足場に使え」、「えっ何処?」を繰り返してたもんな。

「あーその辺に糸張ってんだな」って、こちらからしたら丸分かり。

「あとねー、君達、色々欠点はあるけど、多分君達が一番自覚してないことを教えてあげよう」

おっ?

「ルイーシュも気づいただろ?」

「えぇ。一戦目で思いましたね」

「君ら、お互い自己主張強過ぎ」

「つまり、お互い自意識過剰ってことです」

「…」

「…」

自分達より倍以上年上の、学院OBに。

ボロクソに言われ、真顔で無言の令月達である。

…ちょっと、可哀想になってきた。

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