神殺しのクロノスタシスⅢ
――――――…目の前に。
微笑ましい光景が広がっている。
「『八千歳』、そこ違うよ。そこは()がついてるから、そこから先に計算するんだよ」
「はぁー?意味分かんない。何で数式の中に序列ついてんの?別々にすれば良いのに」
「僕もそう思ったけど、そういう風に世の中は回ってるらしいんだ」
「めんどーな世の中だなぁ…。それと『八千代』、君もそこ、違うよ」
「えっ、何処?」
「『炎魔法Ⅲ』でしょ?そこはⅡの応用問題で…」
「そうなの?難しいね魔導理論って…。もっと単純にすれば良いのに」
「俺もそう思ったけど、そういう風に世の中は回ってるらしいよ」
微笑ましい。
実に微笑ましい光景じゃないか?
二人の仲良し生徒が、お互いに宿題を教え合っている。
ただし、宿題の内容は、それぞれ違う。
お互い、今まで学んでこなかった範囲の課題に取り組んでいる。
令月君は、力魔法以外の魔導理論を。
すぐり君は、魔導理論以外の一般教養を。
令月君も、ちょっと前までは、小学校で習う範囲の一般教養にも欠けていたのだが。
イーニシュフェルト魔導学院に来て、放課後学習会等で猛勉強し。
今では、ほとんど年相応の教養を身に着けている。
ただ、魔導理論の方は、まだまだ同級生に追いついているとは言い難い。
令月君の偏った魔導適性のせいで、これまで全く学んでこなかったせいでもあるが…。
結局、自分は使えない魔法の魔導理論は、なかなか覚えづらいってね。
一方のすぐり君は、幼い頃から魔導適性に恵まれていたこともあり。
『アメノミコト』で、一通りの魔導理論の基礎を学んでいる。
故に、魔導理論の成績に関しては、問題ないのだが。
その代わり、普通小学校で習う範囲の勉強が、ほとんど出来ない。
数学どころか、算数すら怪しい。
単純な四則演算は出来るのだが、それ以上の勉強はしてこなかったらしく。
この機会を活かして、今まで勉強してこなかった一般教養を改めて、勉強してもらおうということで。
それに、こうすればお互い教え合えるから。
やっぱり、教師がマンツーマンで教えるより。
生徒同士が、互いに教え合う方が、遥かに効率が良い。
教師が思う「難しい部分」と、実際に生徒が躓く「難しい部分」は、大きな違いがある。
生徒目線で教え合えば、時に教師が教えるより分かりやすく、頭に入りやすい。
それに何より。
不仲だった二人が、仲良く勉強を教え合っている姿が、物凄く微笑ましい。
もう、この姿を眺めてるだけで、チョコレート一箱食べられる。
すると。
「ねぇ、学院長」
令月君が、こちらを向いて言った。
「どうかした?」
「今日、羽久はどうしたの?何処行ったの」
あぁ。
「なんだかね、イレースちゃんのお使いで、聖魔騎士団に行ったらしいよ」
朝学院長室に来てみると、メモが貼り付けてあった。
シュニィちゃんから話もあるとかで、帰りは遅くなるかもしれない。
何の話なんだろう。血腥いことでなければ良いのだが。
「そーなんだ。つまんないねー」
「そういえば、不死身先生もいないもんね」
確かに。
「今朝から姿見ないね」
「まーたリリスちゃんとかいうのと、イチャイチャしてるんじゃないの?」
こら。やめなさい。
すると。
「ただいま」
「あ、羽久」
噂をすれば、何とやら。
羽久が戻ってきた。
微笑ましい光景が広がっている。
「『八千歳』、そこ違うよ。そこは()がついてるから、そこから先に計算するんだよ」
「はぁー?意味分かんない。何で数式の中に序列ついてんの?別々にすれば良いのに」
「僕もそう思ったけど、そういう風に世の中は回ってるらしいんだ」
「めんどーな世の中だなぁ…。それと『八千代』、君もそこ、違うよ」
「えっ、何処?」
「『炎魔法Ⅲ』でしょ?そこはⅡの応用問題で…」
「そうなの?難しいね魔導理論って…。もっと単純にすれば良いのに」
「俺もそう思ったけど、そういう風に世の中は回ってるらしいよ」
微笑ましい。
実に微笑ましい光景じゃないか?
二人の仲良し生徒が、お互いに宿題を教え合っている。
ただし、宿題の内容は、それぞれ違う。
お互い、今まで学んでこなかった範囲の課題に取り組んでいる。
令月君は、力魔法以外の魔導理論を。
すぐり君は、魔導理論以外の一般教養を。
令月君も、ちょっと前までは、小学校で習う範囲の一般教養にも欠けていたのだが。
イーニシュフェルト魔導学院に来て、放課後学習会等で猛勉強し。
今では、ほとんど年相応の教養を身に着けている。
ただ、魔導理論の方は、まだまだ同級生に追いついているとは言い難い。
令月君の偏った魔導適性のせいで、これまで全く学んでこなかったせいでもあるが…。
結局、自分は使えない魔法の魔導理論は、なかなか覚えづらいってね。
一方のすぐり君は、幼い頃から魔導適性に恵まれていたこともあり。
『アメノミコト』で、一通りの魔導理論の基礎を学んでいる。
故に、魔導理論の成績に関しては、問題ないのだが。
その代わり、普通小学校で習う範囲の勉強が、ほとんど出来ない。
数学どころか、算数すら怪しい。
単純な四則演算は出来るのだが、それ以上の勉強はしてこなかったらしく。
この機会を活かして、今まで勉強してこなかった一般教養を改めて、勉強してもらおうということで。
それに、こうすればお互い教え合えるから。
やっぱり、教師がマンツーマンで教えるより。
生徒同士が、互いに教え合う方が、遥かに効率が良い。
教師が思う「難しい部分」と、実際に生徒が躓く「難しい部分」は、大きな違いがある。
生徒目線で教え合えば、時に教師が教えるより分かりやすく、頭に入りやすい。
それに何より。
不仲だった二人が、仲良く勉強を教え合っている姿が、物凄く微笑ましい。
もう、この姿を眺めてるだけで、チョコレート一箱食べられる。
すると。
「ねぇ、学院長」
令月君が、こちらを向いて言った。
「どうかした?」
「今日、羽久はどうしたの?何処行ったの」
あぁ。
「なんだかね、イレースちゃんのお使いで、聖魔騎士団に行ったらしいよ」
朝学院長室に来てみると、メモが貼り付けてあった。
シュニィちゃんから話もあるとかで、帰りは遅くなるかもしれない。
何の話なんだろう。血腥いことでなければ良いのだが。
「そーなんだ。つまんないねー」
「そういえば、不死身先生もいないもんね」
確かに。
「今朝から姿見ないね」
「まーたリリスちゃんとかいうのと、イチャイチャしてるんじゃないの?」
こら。やめなさい。
すると。
「ただいま」
「あ、羽久」
噂をすれば、何とやら。
羽久が戻ってきた。