神殺しのクロノスタシスⅢ
―――――――…違和感に気づいたのは、シルナ達だけではなかった。

「羽久」が、学院長を訪ねる、少し前。

俺は、イレースから託された封筒を手に、聖魔騎士団魔導部隊を訪ねていた。  

魔導部隊隊舎で、門番をしていた魔導師に、「シュニィに呼ばれて来た」と言うと。

シュニィがいる会議室まで、案内してくれた。

会議室ってことは、なんか会議してんのかな。

そこに割って入るのは、大変申し訳無いが。

「シュニィ。入るぞ」

「…?あら、羽久さん」

「ん?どうした?」

会議室には、シュニィ、アトラス、ジュリス、ベリクリーデの四人がいた。

テーブルの上に、魔導隊舎の地図を置き、何やら話し合っているようだった。

「悪いな、会議中に」
 
「あのね、『アメノミコト』っていう暗殺者がここに攻めてきたらどうしようかって、今話し合ってたんだー」

ベリクリーデが、物凄く軽い口調で説明してくれた。

有り難いんだが、お前はもうちょっと緊張感を持った方が良いんじゃないか?

すると、案の定。

「…あのな。敵の…ヴァルシーナの目的はお前だってこと、自覚してるか?真っ先に、一番にお前が狙われるんだぞ」

ジュリスが、呆れたように言った。

が。

「私が一番?一番乗りだー」

一番と言われて、何故か嬉しそう。

…駄目だこりゃ。

ジュリスが深々と溜め息をつくも、ベリクリーデはきょとん顔。

苦労してんな、お前も。

で。

「シュニィ、これ。イレースから」

「あら、何ですか?」

「先日の『アメノミコト』襲撃の報告書だって」

「…?先日のって…。例の、『アメノミコト』から挑戦状を受けて、森の奥で戦闘が起きたという、あの件ですか?」

「そうだけど」

それ以外に何があるんだ?

しかし、シュニィは困惑した顔を見せた。

「あの件の報告書なら…もう、とっくに受け取ってますが…」

「えっ」

「いつも通り、詳細なレポートを受け取りましたよ。まだ追加分が…?それとも、何か訂正点が…?」

俺は、慌てて糊付けされていた封筒の口を開けた。

中には、紙の束が入っていた。

…白紙の、紙の束が。

「…!?」

「これは…」

真っ白な紙の束。

何も書かれていない、ただのレポート用紙が入っているだけ。

イレースに限って、間違えて別の用紙を入れた?
 
そんなはずがない。

あの件について、報告書を既に提出しているのなら、なおさら。
 
何でイレースは、こんなものを俺に届けさせたんだ?

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