神殺しのクロノスタシスⅢ
「じ、じゃあ…シュニィの話っていうのは?」

「え、わ、私ですか?」

「俺に話があるから、魔導部隊まで来てくれってイレースに伝言したんだろ?」
 
だからこそ、俺は朝一番にここを訪ねてきたのだ。

しかし。

「な、何のことですか…?私、イレースさんに伝言なんて何も…」

「…!」

…まさか。

…まさか、まさか。

今朝、職員室で会ったあの「イレース」は。

あの「イレース」は…誰だ?

この場にいる全員…ではなく、ベリクリーデを除く全員が。

事態の急変に気づいた。

「すぐに学院に戻る」

もし、もし俺が今考えた「最悪の事態」だったとしたら。

今すぐ、イーニシュフェルト魔導学院に戻らなくては。

「わ、私も行きます。学院長達に何かあったら…」

シュニィが、そう申し出た。

更に。

「シュニィが行くなら、俺も行くぞ!シュニィが行くところなら、海でも空でも月でも太陽でも、何処にでもついていくぞ!」

と、勇ましいアトラス。

太陽はやめとけよ。

すると。

「いや、お宅らはここにいろ。俺が行く」

ジュリスがそう言った。

「もし本当に『緊急事態』なら、聖魔騎士団だって安全じゃない。団長と副団長がいなくてどうする。お前らはここを守れ」

「ジュリスさん、でも…」

「心配するな。それより、こいつ…ベリクリーデを頼む」

「…分かりました」

シュニィは、瞬時に決断した。

「羽久さん、ジュリスさん、学院を頼みます。我々は、聖魔騎士団を守ります」

「頼むぞ。ベリクリーデ、お前シュニィ達に迷惑かけんなよ」

と、ジュリスが釘を刺すも。

ベリクリーデは、表情一つ変えず。

代わりに。

「…ジュリス」

「何だよ?」

「ちゃんと戻ってきてね」

突然そんなことを言うものだから、ジュリスは一瞬、目が点になり。

その後。

「ばーか。俺がこんなところで死ぬかよ。お前こそ、ホイホイ敵に捕まるんじゃねぇぞ」

「うん」

「よし…。じゃ、行くぞ羽久」

「あぁ」

間違いなく、イーニシュフェルト魔導学院で、何かが起きている。

俺は学院に残してきた人々のことを考え、身が切れるような思いを感じた。
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