神殺しのクロノスタシスⅢ
―――――――…実は。

結構前から、起きていたのだが。

何やら俺を取り囲んで、深刻そうな話をしていたもんだから。

何となく、起きていると言いづらかった。

…洗脳魔法なんて話題が出てきたから、余計に。

知らないうちに、まんまとヴァルシーナの洗脳魔法にかかり。

みすみす、レーヴァテインなんて危険な人格を生み出してしまい。

それにより、ここにいる全員に迷惑をかけ、おまけにお互いに疑心暗鬼に陥らせた。

その張本人である俺が、どうして彼らに口を挟めようか。

ヴァルシーナの洗脳魔法にかかった俺の言葉を、どれだけ信用してもらえるか。

でも、いつまでも黙っている訳にはいかない。

仲間が困ってるのに…。自分だけ寝たフリしてる訳にはいかないだろう。

「…羽久だよ。少なくとも、自分では…そう思ってる」

「そう、良かった」

本当に俺が羽久・グラスフィアなのか、何一つ証拠を提示することは出来ないのに。

シルナは、一も二もなく頷いた。

「…そんなに心配しなくても、少なくともあなたの身体の中には、レーヴァテインはいないと思いますけど」

目が覚めたと知るや、早速俺の心を読んでくるナジュ。

隙あらば読むな。

「だって、あなたの身体の中にいると不便だから、わざわざ本体と切り離して、別の器を用意して出ていったんでしょう?なら、今のあなたの身体には、羽久さん含め、元々いた人格しかいないのでは?」

「…俺も、そう思う」

まだ俺の中にレーヴァテインが残っているのなら。

わざわざレーヴァテインが、俺や『前の』俺を謀って、代わりの肉体を用意した意味がない。

多分レーヴァテインは、もうこの身体の中にはいない。
 
完全に、追い出したはずだ。

「信じてあげたいけど、でも残念ながら、この状況じゃ信じてあげられないよね〜」

「…」

…すぐりが。

痛いところを突いてきた。

< 575 / 822 >

この作品をシェア

pagetop