神殺しのクロノスタシスⅢ
…かくなる上は。

「…シルナ」

「ふぇ?」

「なんか考えろ。こいつに情報を吐かせる方法」

「えっ!そ、そうだな~…あっ。良いこと思い付いた!」

何だ?

「ちゃんと質問に答えてくれないと…うん、お菓子あげない!お菓子あげないんだからね!」

全然駄目だ。

一瞬でも期待した、俺が馬鹿だった。

「…それ、何の拷問になるの?」

馬鹿にするを通り越して、呆れた口調の黙秘君。

俺も同感だよ。

「えっ。だってお菓子食べられないんだよ?私にとっては、禁固刑より酷い拷問…」

それはお前だけだ。

だがシルナ、お前のその発想は悪くない。

俺も良いこと思い付いた。

「喋りたくなるまで、レモンと梅干し口の中に詰め込んでやろうか」

「酸っぱい!羽久、それ駄目!怖い!想像しただけで唾が…」

おっさんは黙ってろ。

「やれば良いよ。味覚くらい死んだって、命を取られる訳じゃない」

我ながら、子供相手には効果的な拷問かと思ったのだが。

これくらいじゃ駄目か。

「イレース。何か良い案はないか」

「喋りたくなるまで、永遠に罰掃除させましょうか。校舎内はおろか、学生寮、庭木の手入れまで」

怖っ。

さすが元ラミッドフルスの鬼教官。学生への罰則が重い。

しかし。

「良いよ。ピカピカになるまでやってあげるよ」

全然効いてない。

まぁ、罰掃除に音を上げて白状、はなかなかないよな。

「ナジュ。何か良い案は?」

「逆さに吊って振りまくる」

「却下」

殺す気か。

「別にそのくらいじゃ死にませんよ」

「相手は子供だぞ。もっと容赦をしてやれ」

「容赦して喋る相手じゃないじゃないですか。じゃあ、一滴ずつ頭に水を垂らす」

「普通に拷問じゃないか」

さてはお前、ご自慢の読心魔法を防がれたこと、根に持ってるな?

「なら、くすぐるのはどうです。古来から使われてる拷問術ですよ」

との、イレースの提案。

成程。絵面は物凄く滑稽だが、良い案だ。

しかし。

「そのくらい対策してるよ。意識的に皮膚感覚を鈍くすれば良いだけ」

あっさりと答える黙秘君。

くすぐり対策も万全だと。

「じゃあ…じゃあ、私の秘蔵のチョコレートを目の前に置いて、見てるだけで食べられないっていう拷問はどう!?」

シルナが、また何か言い出した。

何だ、そのシルナ限定でめちゃくちゃ効きそうな拷問は。

しかも。

「あっ、待って!それ可哀想!無理!可哀想だからやっぱり今のなし!」

自分から言っておきながら、自分で却下してる。

心配しなくても、そんな拷問、お前にしか効かねぇよ。

「全裸にして、グロ虫を身体に這わせたらどうですか?シルナオオカマキリとか、シルナオオムカデとか、シルナサナダムシとか…」

と、ナジュ。

エグい拷問考えるな、お前は。

「可哀想!しかも全部私の分身なの何で!?駄目だよ!」

これも却下。

さて、思い付く拷問を挙げてみても、この黙秘君には全然効果がなさそうだが。

「…茶番、終わった?」

黙秘君は、つまらなさそうに言った。

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