神殺しのクロノスタシスⅢ
しかし、洗脳魔法の使い方を教えた訳ではない。

そもそも、教えたところで、『アメノミコト』らの下等な魔導化学では、使いこなすことなど不可能。

故に、奴らが洗脳魔法を必要としたとき、代わりに私が洗脳魔法を使うことで、手を打った。
 
難しい交渉だった。

色々と話し合った末、私達は互いに条件付きで、手を組んだ。

その条件は、こうだ。

『アメノミコト』は、基本的に『アメノミコト』の戦力のみで、シルナ・エインリー以下、裏切り者の暗殺者達を始末する。

私は、基本的に私の力のみで、シルナ・エインリーを始末する。

手は組むが、しかし原則お互いの争いに手出しはしない。

だから、私は『アメノミコト』がシルナ・エインリー達に挑戦状を出し、森の奥で決闘したときも、奴らに助力はしなかった。

あくまであのとき、私は自分のやるべきことをしたまでだ。

そして、『アメノミコト』は負けた。

その後、今回のレーヴァテインによる奇襲作戦。

これも、あくまで『アメノミコト』は手を出してこなかった。私だけで…私とレーヴァテインのみで行った。

だが、失敗した。

『アメノミコト』と同じく、私も作戦の失敗を認めざるを得ない。

故に…。

「…ふん。あれだけの規模の戦力を動かして、それでも無様に負けた貴様らに、嫌味を言われる筋合いはない」

「戯言を。ご自慢の魔法を使って、無様に見破られた小娘が、それを言うか」

…ちっ。

「そんなことはどうでも良い…。それより、今後のことを決めなければならないだろう」

「そうだな」

今後。

即ち、私と『アメノミコト』が手を組んだとき決めた、第三の条件。

『アメノミコト』単独による奇襲も、私単独による奇襲も失敗したなら。

そのときは、両者が手を組み、共にシルナ・エインリーを討つ。

今が、そのときだ。





…しかし。
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