神殺しのクロノスタシスⅢ
…ずっと、目を閉じて黙秘を貫いていた黙秘君が。

いきなり、目を開けた。

おいおい。読心魔法対策は良いのか?

こいつ、ナジュの奴は、目を開けた瞬間に読み始めるぞ。

「好きなだけ読んで良いよー。どうせ俺に、もう帰る場所なんてないし」

「…」

「お宅の言った通り、俺、任務に失敗した。『八千代』より上だって証明するつもりだったのに、その『八千代』にも負けた。あーあ…」

黙秘君…いや、もう黙秘してないが…彼は、天を仰いで溜め息をついた。

「結局俺は『八千代』には勝てないんだな…。残念だよ」

「…」

「もう良い。あれだけ正々堂々戦って、それで負けたんだから、悔いはないよ。帰っても殺されるし。敗残の捕虜は、好きなように扱ってくれれば良い。君達の言うことを聞くよ」

…こいつ。

本気か?

「あ、俺の名前聞きたいんだっけ?良いよ、教えてあげる。『八千代』ですら知らない、レアな情報だよ」

「…名前、教えてくれるの?」

「うん。すぐり。花曇(はなぐもり)すぐり」

すぐり…。

「『アメノミコト』でのコードネームは『八千歳』。どっちでも、好きな方で呼んで良いよ。コードネームの方が、呼ばれ慣れてるけどね」

「…ナジュ」

読心魔法を解禁されたであろうナジュに、真偽を尋ねる。

本気で言ってるのか?

「…嘘はついてないですね。本気で言ってるみたいです」

…マジかよ。

「じゃあ、もう抵抗しない?暴れたり、令月君や他の生徒達に危害を加えたりしない?」

「しないよー…。したところで、また時間を止められて拘束されるだけじゃん」

まぁそうなんだけど。

「『八千代』との決着もついたし、煮るなり焼くなり、もう好きにしてよ」

「…」

…何だ、この豹変ぶりは。

でも、ナジュが心を読んで、本当だと言ってるのなら、そうなんだろう。

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