神殺しのクロノスタシスⅢ
―――――――…羽久が二十音に「入れ替わった」、その瞬間に。
私は、何とか止めようとしたが。
間に合わなかった。
懐中時計を手にした二十音が、レーヴァテインに触れるなり。
レーヴァテインの身体は、朽ち果てるように塵となった。
そして。
レーヴァテインを一瞬で殺した二十音の殺意は、ヴァルシーナちゃんに向いた。
レーヴァテインは、どうにもならなかったが。
でも、ヴァルシーナちゃんだけは。
私は、ヴァルシーナちゃんに掴みかかろうとする二十音を、抱き締めるようにして止めた。
「二十音!やめなさい!」
「あれ…あいつ、敵。しーちゃんを、傷つける敵…」
完全に、ヴァルシーナちゃんを敵とみなしている。
「敵じゃない。彼女は敵じゃないから。傷つけちゃ駄目」
「あいつが『あんなモノ』を生んだんだ。あいつが、しーちゃんの敵になるモノを…」
そうか。
二十音が怒っているのは、レーヴァテインのみならず。
自分の目を謀り、掻い潜って、レーヴァテインなんていう…二十音の最も望まない人格を、無理矢理生み出した存在。
それが、ヴァルシーナちゃんなのだ。
だから二十音は、私が何と言おうと、ヴァルシーナを敵とみなす。
私の敵じゃない。二十音自身の敵なのだ。
そうなったら…。
「ヴァルシーナちゃん!逃げて!」
「っ…!」
唯一の味方を、あまりにもあっという間に、あっさりと奪われて。
放心する気持ちは、充分に分かるけども。
だけど今は、それどころじゃない。
ヴァルシーナちゃんが、この場から退かないことには。
二十音は、何としても彼女を殺そうとする。
憎い人格を生み出した敵を、殺す為に。
「で、でも」
「良いから行きなさい!早く!」
私だって、そう長く二十音を止めることは出来ない。
本当に暴走した二十音は、私とて簡単には止められないのだ。
「…っ!」
結果。
ヴァルシーナちゃんは、憎しみとも、悲しみとも知れない目をして。
その場から、霧のように消え去った。
…良かった。
私は、何とか止めようとしたが。
間に合わなかった。
懐中時計を手にした二十音が、レーヴァテインに触れるなり。
レーヴァテインの身体は、朽ち果てるように塵となった。
そして。
レーヴァテインを一瞬で殺した二十音の殺意は、ヴァルシーナちゃんに向いた。
レーヴァテインは、どうにもならなかったが。
でも、ヴァルシーナちゃんだけは。
私は、ヴァルシーナちゃんに掴みかかろうとする二十音を、抱き締めるようにして止めた。
「二十音!やめなさい!」
「あれ…あいつ、敵。しーちゃんを、傷つける敵…」
完全に、ヴァルシーナちゃんを敵とみなしている。
「敵じゃない。彼女は敵じゃないから。傷つけちゃ駄目」
「あいつが『あんなモノ』を生んだんだ。あいつが、しーちゃんの敵になるモノを…」
そうか。
二十音が怒っているのは、レーヴァテインのみならず。
自分の目を謀り、掻い潜って、レーヴァテインなんていう…二十音の最も望まない人格を、無理矢理生み出した存在。
それが、ヴァルシーナちゃんなのだ。
だから二十音は、私が何と言おうと、ヴァルシーナを敵とみなす。
私の敵じゃない。二十音自身の敵なのだ。
そうなったら…。
「ヴァルシーナちゃん!逃げて!」
「っ…!」
唯一の味方を、あまりにもあっという間に、あっさりと奪われて。
放心する気持ちは、充分に分かるけども。
だけど今は、それどころじゃない。
ヴァルシーナちゃんが、この場から退かないことには。
二十音は、何としても彼女を殺そうとする。
憎い人格を生み出した敵を、殺す為に。
「で、でも」
「良いから行きなさい!早く!」
私だって、そう長く二十音を止めることは出来ない。
本当に暴走した二十音は、私とて簡単には止められないのだ。
「…っ!」
結果。
ヴァルシーナちゃんは、憎しみとも、悲しみとも知れない目をして。
その場から、霧のように消え去った。
…良かった。