神殺しのクロノスタシスⅢ
スマートに勝つ奴はな。

腕一本切られたりしないんだよ。馬鹿。

「馬鹿とは失礼な…。仕方ないでしょう?僕はご老人は労るタイプなんですよ」

「何処がだよ…」

「そんな訳ですから学院長、無理して腰曲げなくて良いですよ?膝とか大丈夫ですか?」

「…ナジュ君…。気遣いは嬉しいんだけど、私、ご老人扱い…?」

切ない顔のシルナ。

お前はご老人だ。

「小賢しくも閃光弾とか使われちゃいまして。不意を突かれて手首切られたんで、毒が回る前に腕ごと落としました」

「あー…」

成程、閃光弾で驚かして、読心魔法を途切れさせ。

その隙に毒を食らったから、毒が全身に回る前に、腕ごと切り落としたのか。

賢明な判断ではあるが、他人に推奨したくはないな。

回復魔法で再生出来るとはいえ。

普通、自分で自分の腕や足を切り落とすのは、相当勇気と胆力が要るぞ。

不死身のナジュだからこそ、あっさりと決断出来たのだ。

相変わらず、危ない橋ばっかり渡りやがって。

壊れかけの吊橋を見たら、渡らずにはいられないタイプだな。

「それは違いますね。僕は壊れかけの吊橋を見たら、いっそ向こう岸にダイブを試みるタイプです」

問題外。

とりあえず、こいつは人間としての規格を逸しているので、深くは考えないでおこう。

「それより僕は、そちらの方が心配ですね。大丈夫だったんですか?ヴァルシーナとレーヴァテインとの決闘は」

「…それは…」

撒菱拾いの作業をする、俺とシルナの手が、止まった。
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