神殺しのクロノスタシスⅢ
「どういうことだ…?」
「実は『アメノミコト』に入ったのって、僕の方が先なんだ」
そうなのか。
「で、羽久も知ってると思うけど、『八千歳』も認めないけど、『八千歳』と僕の実力はほとんど変わらないよね」
「あぁ」
それは俺にも分かる。
すぐりだけが、それを認めていないが。
しかしその劣等感は、『アメノミコト』の頭領、鬼頭夜陰に植え付けられた、それこそ、ある種の洗脳のようなものだ。
「だから、先に入った方を贔屓することで、後に入った方を嫉妬させて、お互いに競争させようとしたんじゃないかって」
「…!」
「『八千歳』は、僕を越える為に、血反吐を吐くほど努力してた。でも僕も、そんな『八千歳』に追い越されないように、同じように血反吐を吐くような努力をしてた。そうして、お互いに競わせて強くする為に、わざと『八千歳』を煽ってたんじゃないかな」
…成程。
あの鬼頭なら、それくらいの陰湿なことはやりかねん。
「僕が先に入って、それに僕の方が一つ年上だったから、わざと僕を贔屓しただけで…」
「…」
「『八千歳』の方が先に入ってたら、僕は劣等感を抱かされて、『八千歳』に嫉妬して、『八千歳』を嫌ってたのかもしれない」
「…そうだな」
もし、何かが違っていたら。
運命の神様とやらが、ほんの少し二人の順番を気まぐれに弄っていたら。
そんなことになっていたのかもしれない。
「本当のところは分からない。頭領の考えることだから、本当に僕の方が使えると思ったから、僕を贔屓してただけなのかもしれない。もしかしたら、もっと別の、違う意志があったのかもしれない」
「…」
「ううん…。本当は、そんな意志すらなかったのかもしれない。僕達を対立させることに、意味なんて持ってなかったのかもしれない。頭領が何を考えてるかなんて、僕には分からない…」
…安心しろ。
俺にも分からない。あの男が何を考えているのか。
多分、俺達には思いもよらないような、悪どいことを考えているのだろう。
「…でもね、これだけは分かるんだ」
「うん?」
令月は、野菜に水をあげながら言った。
「『八千歳』がいたから、僕は強くなれた。…『八千歳』にとって僕も、そんな存在になれてたら良いな」
「…安心しろ」
それについては、太鼓判を押してやる。
すぐりは…あいつは、ずっとお前の背中を追いかけてきた。
お前がいなかったら、前に向かって走り出すこともなかった。
だから。
「お前達は、知らず知らずのうちに、お互いを高め合って生きてきたんだ。ずっと一緒に、強くなってきたんだ。今までも、これからも」
俺が、そう言ってやると。
「…うん」
令月は、珍しく少し微笑んで、嬉しそうに頷いた。
「実は『アメノミコト』に入ったのって、僕の方が先なんだ」
そうなのか。
「で、羽久も知ってると思うけど、『八千歳』も認めないけど、『八千歳』と僕の実力はほとんど変わらないよね」
「あぁ」
それは俺にも分かる。
すぐりだけが、それを認めていないが。
しかしその劣等感は、『アメノミコト』の頭領、鬼頭夜陰に植え付けられた、それこそ、ある種の洗脳のようなものだ。
「だから、先に入った方を贔屓することで、後に入った方を嫉妬させて、お互いに競争させようとしたんじゃないかって」
「…!」
「『八千歳』は、僕を越える為に、血反吐を吐くほど努力してた。でも僕も、そんな『八千歳』に追い越されないように、同じように血反吐を吐くような努力をしてた。そうして、お互いに競わせて強くする為に、わざと『八千歳』を煽ってたんじゃないかな」
…成程。
あの鬼頭なら、それくらいの陰湿なことはやりかねん。
「僕が先に入って、それに僕の方が一つ年上だったから、わざと僕を贔屓しただけで…」
「…」
「『八千歳』の方が先に入ってたら、僕は劣等感を抱かされて、『八千歳』に嫉妬して、『八千歳』を嫌ってたのかもしれない」
「…そうだな」
もし、何かが違っていたら。
運命の神様とやらが、ほんの少し二人の順番を気まぐれに弄っていたら。
そんなことになっていたのかもしれない。
「本当のところは分からない。頭領の考えることだから、本当に僕の方が使えると思ったから、僕を贔屓してただけなのかもしれない。もしかしたら、もっと別の、違う意志があったのかもしれない」
「…」
「ううん…。本当は、そんな意志すらなかったのかもしれない。僕達を対立させることに、意味なんて持ってなかったのかもしれない。頭領が何を考えてるかなんて、僕には分からない…」
…安心しろ。
俺にも分からない。あの男が何を考えているのか。
多分、俺達には思いもよらないような、悪どいことを考えているのだろう。
「…でもね、これだけは分かるんだ」
「うん?」
令月は、野菜に水をあげながら言った。
「『八千歳』がいたから、僕は強くなれた。…『八千歳』にとって僕も、そんな存在になれてたら良いな」
「…安心しろ」
それについては、太鼓判を押してやる。
すぐりは…あいつは、ずっとお前の背中を追いかけてきた。
お前がいなかったら、前に向かって走り出すこともなかった。
だから。
「お前達は、知らず知らずのうちに、お互いを高め合って生きてきたんだ。ずっと一緒に、強くなってきたんだ。今までも、これからも」
俺が、そう言ってやると。
「…うん」
令月は、珍しく少し微笑んで、嬉しそうに頷いた。