神殺しのクロノスタシスⅢ
…幸い。

今日、ベリクリーデに特に任務はない。

従って、ベリクリーデとペアを組まされている俺も、今日は任務がない。

丁度良い。

「ベリクリーデ、お前、今日街に行って、下着買ってこい」

「ジュリスも来てくれるの?」

「何で俺が、女の下着を一緒に買いに行くんだよ。別の人間に頼むに決まってるだろ」

「…」

何でちょっとしょんぼりしてんだよ。
 
とはいえ、こいつ一人に行かせても、絶対また小玉スイカを買ってくるのは目に見えている。

だったら…。

「シュニィかクュルナ辺りに、付き添いを頼むか…」

女同士なら、問題ないだろう。





…と、思ったのだが。

まず、シュニィは。

「あ、ごめんなさい…。実は今日、レグルスが朝から熱を出してて…」

ルシェリート家を訪ねると、そこは阿鼻叫喚の様相を呈していた。

「さっきから、アトラスさんが大騒ぎしてもう、大丈夫だって言ってるのに言うこと聞かな、」

「シュニィィィィィィっ!!熱が!さっきより熱が上がってる気がする!後遺症が!後遺症が残るかもしれない!やっぱり病院に行った方が!」

耳が割れそうなほどの叫び声をあげながら、奥からアトラスがすっ飛んできた。

鼓膜敗れるかと思った。

「だから、大丈夫です!さっき回復魔法もかけましたし、薬も飲ませましたし。食欲もあるから自然に治ると、」

「でも後遺症が残ったらどうするんだ!?やっぱり病院に連れてってくる!」

レグルス少年を、小脇に抱え。

またしても近所の小児科を、ぶち壊さんばかりに駆け出そうとするアトラス。

を、必死に止めるシュニィ。

阿鼻叫喚。

「だから、大丈夫です!この間も熱出して病院行って、このくらいの風邪なら子供はよく引くから、そんなに心配しなくて良いですよ、って言われたでしょう!」

「でもあのときはあのとき、今は今じゃないか!俺達は過去ではなく、今を生きてるんだ!」

「熱って言ってもまだ微熱でしょう!」

「37度5分だった!」

本当に微熱だな。

子供は元々体温高いって言うし、そもそも子供はよく熱出すもんだし。

多分、シュニィの言う通り、心配しなくて大丈夫なんだろう。

が。

「何と言うか…レグルスが…苦しんでる気がする!俺に助けを求めているような…そんなシンパシーを感じるんだ…」

…なんか言ってるぞ、お宅の旦那。

言っちゃ悪いが、頭悪そうだな。

「そんな訳で行ってくる!」

「待ちなさいったら!あぁ、もう!」

…。

「す、済みません。今朝からこ、こんな調子なので。ちょっと離れられないんです」

「そうか…。無理言って悪かったな…」

ベリクリーデの買い物に、付き合ってもらうどころじゃなかった。

ベリクリーデより、よっぽど修羅場だな。

頑張れシュニィ。俺は応援している。

とりあえず、全てを見なかったことにして。

次は、クュルナのところに向かった…。







…の、だが。

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