神殺しのクロノスタシスⅢ
「え、任務?」

「はい。今日は国境警備隊の視察に」

「…あー…」

現在ルーデュニア聖王国は、隣国ジャマ王国と、一触即発…とまでは言わないにしても。

お互い、密かに影で睨み合っている関係。

国境警備に、手は抜けない。

故に、聖魔騎士団魔導部隊にも、お鉢が回ってきているのだ。

大抵魔導部隊の大隊長達が、交代交代で様子を見に行ってるのだが。

そうか、今日はクュルナの日なのか…。

「何か、私に用でも?」

「あ、いや…」

俺が代わろうか、とも思ったが。

クュルナも、もう部隊を動かす用意をしているし。

すっかり準備万端整えてるのに、今更予定変えてくれ、とも言えない。

「大丈夫だ、気にしないでくれ」

「そうですか?では…」

隊舎を後にする、クュルナの背中を見つめながら。

…俺は、自分がどうしたら良いのか考えた。

ベリクリーデの下着問題なんて知るか、と放っとくか。

あの、小玉スイカブラをつけさせておくか。

…それとも、俺が買い物に付き合うか。

…結局、俺なのか。

俺が行くしかないと言うのか。

何が嬉しくて。

「はぁ…」

俺は、本日五度目の溜め息を、盛大についたのであった。

俺、もう午前だけで五回溜め息ついてんだけど。

あと今日何回、溜め息つけば良いんだろうな。
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