神殺しのクロノスタシスⅢ
…こうして。

俺は、長きに渡る人生で、初めて。

女性専用ランジェリーショップに、足を踏み入れた。

…何で俺、こんな桃色空間に。

嬉しくているんじゃないからな、言っとくけど。

くそ、ベリクリーデとあんな約束をしなければ。

「で、ジュリス」

「何だよ…。俺は今、心の中で色々葛藤してるんだよ…」

「大変だね」

お前のせいだがな。

「ほら、早く選べ」

もう、一秒だっていたくねぇよ。

しかし。

「…これ?」

ぷらーん、と売り物の下着をぶら下げるベリクリーデ。

「…それは子供用だ」

明らかに、お前の胸のサイズと合わんだろ。

「ジュリス。これ何?A80とかB70とか」

生々しい数字を出してきた。

「あー…。うん…」

それな。うん。

知ってる自分が嫌になってくるが。

これをどう教えたら良いものか。

…。

俺は、服の上からでも測れるという、貸出専用の巻き尺を借りてきて。

「ちょっと腕上げろ」

「うん」

ベリクリーデの胸囲を計測。

何で俺がこんなことしてんの?

マネキンだ。マネキンの胸囲を測ってると思おう。

「…D70ってところだな」

「私Dなの?血液型?」

「…」

「あれ?でも私血液型、B型だよ?Bじゃないの?」

「…」

「…何で黙っちゃうの?」

…うるせぇ。

それはともかく。

「良いか、ここのハンガーに、D70ってシール貼ってあるだろ?」

「うん」

「このシールが貼ってある奴を選べ」

「分かった」

よし。

これで、しばらくは放牧出来るな。

サイズは分かったんだから、好きなの選ばせとけば良いだろう…と。

軽く考えていたら。

「ジュリス、選んだ」

「おー、どれにしっ…ぶはっ!?」

ベリクリーデが持ってきた商品を見て、俺は思わず噴き出してしまった。
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