神殺しのクロノスタシスⅢ
クレープに舌鼓を打った後。
「…」
「…?」
ベリクリーデの顔が、悲惨なことになっている。
口の周りに、チョコとカスタードと、溶けたバニラアイスがべっとり。
五歳の子供でも、もうちょっとお上品に食べるんじゃないか?
しかも、「私何か変なことした?」とでも言いたげに、本人はきょとんとしている。
もういっそ、このまま放っておいても良い気がするが。
このまま帰ってたら、隣を歩いている俺まで風評被害を受ける。
それは嫌だ。
従って。
「…ベリクリーデ、お前ハンカチは?」
「持ってない」
お前に、少しでも女の嗜み的なものを求めた俺が馬鹿だった。
仕方ない。
俺は、ポケットから自分のハンカチを取り出した。
「ちょっとじっとしてろ」
俺は自分のハンカチで、ベリクリーデの汚れに汚れた口の周りを拭いてやった。
全く、俺はこいつのお母さんかよ。
ハンカチの色、黒で良かった。
白かったら、チョコの色が染み付いて落ちないところだった。
「ほら、綺麗になったぞ」
俺のハンカチを犠牲にしてな。
「ありがとージュリス」
はいはい。
「美味しかったね、何て言ったっけ…さっきの、クレーンみたいな名前の食べ物」
「…クレープな」
クレーンって、お前。
「うん、それ」
「そんなに気に入ったのか?」
「うん。どんぐりより美味しかった」
何だって?
「何で比較対象がどんぐりなんだよ…」
ってか、どんぐり食ったことあるのか?
…そういえば。
下着問題で、忘れてたけど。
「お前朝、どんぐり拾いに木登りしてただろ。アホかお前。勝手に出歩くなって言っただろ」
その説教をするのを、危うく失念するところだった。
「でも、窓の外にどんぐりがなってるのが見えたから」
何でどんぐりが欲しかったんだ?
今日日、幼稚園児でもどんぐりくらいじゃ喜ばんぞ。
「ジュリスにあげようと思ったの、どんぐり」
何だと?
「…俺に対する嫌がらせか何か?」
「?」
そんなつもりはないらしい。
まぁ、この性格だからな。
嫌がらせされることはあっても。
自分から他人に対して、嫌がらせするような真似はしないだろう。
良くも悪くも、純真過ぎるのだ、こいつは。
純真と言えば聞こえは良いが、同時に世間知らずでもあるってことだからな。
少しくらいは、人の悪意というものを知っておいた方が、
と、思っていた矢先。
「ゴミ捨ててくるー」
「ん、あぁ…」
ベリクリーデは、くしゃくしゃに丸めたクレープの包み紙を持って立ち上がった。
ゴミ箱は目の前にあるので、迷うことはないはずなのに。
何故か、全く逆方向に歩き出した。
おい。
俺は心の中で、絶賛八回目となる溜め息をつき。
ベリクリーデを追いかけようと立ち上がった、
そのとき。
「ねぇ、そこの可愛いお姉ちゃん」
四人組の男達が、ベリクリーデを取り囲んだ。
「…」
「…?」
ベリクリーデの顔が、悲惨なことになっている。
口の周りに、チョコとカスタードと、溶けたバニラアイスがべっとり。
五歳の子供でも、もうちょっとお上品に食べるんじゃないか?
しかも、「私何か変なことした?」とでも言いたげに、本人はきょとんとしている。
もういっそ、このまま放っておいても良い気がするが。
このまま帰ってたら、隣を歩いている俺まで風評被害を受ける。
それは嫌だ。
従って。
「…ベリクリーデ、お前ハンカチは?」
「持ってない」
お前に、少しでも女の嗜み的なものを求めた俺が馬鹿だった。
仕方ない。
俺は、ポケットから自分のハンカチを取り出した。
「ちょっとじっとしてろ」
俺は自分のハンカチで、ベリクリーデの汚れに汚れた口の周りを拭いてやった。
全く、俺はこいつのお母さんかよ。
ハンカチの色、黒で良かった。
白かったら、チョコの色が染み付いて落ちないところだった。
「ほら、綺麗になったぞ」
俺のハンカチを犠牲にしてな。
「ありがとージュリス」
はいはい。
「美味しかったね、何て言ったっけ…さっきの、クレーンみたいな名前の食べ物」
「…クレープな」
クレーンって、お前。
「うん、それ」
「そんなに気に入ったのか?」
「うん。どんぐりより美味しかった」
何だって?
「何で比較対象がどんぐりなんだよ…」
ってか、どんぐり食ったことあるのか?
…そういえば。
下着問題で、忘れてたけど。
「お前朝、どんぐり拾いに木登りしてただろ。アホかお前。勝手に出歩くなって言っただろ」
その説教をするのを、危うく失念するところだった。
「でも、窓の外にどんぐりがなってるのが見えたから」
何でどんぐりが欲しかったんだ?
今日日、幼稚園児でもどんぐりくらいじゃ喜ばんぞ。
「ジュリスにあげようと思ったの、どんぐり」
何だと?
「…俺に対する嫌がらせか何か?」
「?」
そんなつもりはないらしい。
まぁ、この性格だからな。
嫌がらせされることはあっても。
自分から他人に対して、嫌がらせするような真似はしないだろう。
良くも悪くも、純真過ぎるのだ、こいつは。
純真と言えば聞こえは良いが、同時に世間知らずでもあるってことだからな。
少しくらいは、人の悪意というものを知っておいた方が、
と、思っていた矢先。
「ゴミ捨ててくるー」
「ん、あぁ…」
ベリクリーデは、くしゃくしゃに丸めたクレープの包み紙を持って立ち上がった。
ゴミ箱は目の前にあるので、迷うことはないはずなのに。
何故か、全く逆方向に歩き出した。
おい。
俺は心の中で、絶賛八回目となる溜め息をつき。
ベリクリーデを追いかけようと立ち上がった、
そのとき。
「ねぇ、そこの可愛いお姉ちゃん」
四人組の男達が、ベリクリーデを取り囲んだ。