神殺しのクロノスタシスⅢ
─────…ある意味で。


阿鼻叫喚、とも言うべき光景である。

「仲良くしよう、『八千歳』」

「絶対嫌だね。俺が君と仲良くするなんて、天地がひっくり返っても有り得ない」

「天地はよくひっくり返えるよ。魔法使えるでしょ君は」

「じゃあ、東から日が昇るくらい有り得ない」

「…?それは普通なんじゃないの?」

「なら逆だね。西から日が昇るくらい有り得ない」

などという、謎の会話をしながら。

二人は、戦いを繰り広げていた。

お互い、席に着いて。

すぐりは、シルナが用意したプリントに向かって、鉛筆をカリカリ動かし。

令月は、イレースに課せられたレポートを作成中。勿論筆で。

そして同時に、二人は戦いを繰り広げていた。

鉛筆を持ってない方の手で。

すぐりは、先がドリルのように尖った黒いワイヤーを、触手のように扱って。

令月に向かって、高速で突き刺しまくり。

一方の令月は、筆を持ってない方の手で、そのワイヤー攻撃を、小太刀で防ぎ、あるいは切り落としていた。

切り落としては、切り落としては再生する。

学院長室の床に、切り落とされたワイヤーの残骸が、山のように積もっていた。

それなのに、当の本人達は、何事もないかのような顔をして勉強し。

しかも、そんな会話をしているのである。

意味が分からない。

あまりのシュールな光景に、持っていた書類の束を落としそうになった。

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