神殺しのクロノスタシスⅢ
…とりあえず。

「すぐり」

「何~?」

「攻撃をやめろ」

「何で?」

何でじゃねぇよ。

きょとんとするな。年相応の無邪気な顔しやがって。

「俺、何か悪いことしてる?」

「してるだろ。令月への攻撃をやめろ」

「だから、何でだよ」

話が通じない。

「誰だって、部屋の中に脚長蜂が入ってきたら、追い出すか駆除しようとするでしょ?それと同じじゃん」

こいつ、令月のことを脚長蜂呼ばわり。

「え、僕脚長蜂?なんか格好良い」

こっちはこっちで、害虫呼ばわりされて喜んでるし。

頭痛くなってきた。

「あのさ、すぐり。お前、もう任務は失敗したんじゃなかったのか?何でまだ令月を攻撃してるんだよ」

「それとこれとは話が別でしょ。良い?俺はね、こいつ嫌いなの。視界に入れたくないの。だから攻撃する。OK?」

OKじゃねぇ。

何だ、その頭悪そうな理論は。

「僕としては、親睦を深めようと頑張ってるんだけどな」

「面白い冗談だよ。俺、君のこと嫌いだから。隣で息吸わないで欲しいね」

「…すぅ…」

「…令月。息を止めるな」

死ぬぞ。

息はしろ。

令月の方は良いんだよ。仲良くしようという、その気持ちは高く買う。

が、すぐりの方には、令月と仲良くしようなんて気は、さらさらないようで。

それどころか。

「ていっ」

「あ、コラ」

消しゴムのカスを丸めたものを、令月に向かって投げつける始末。

いじめのやり方が、小学生レベル。

「ふっ。無様」

「…そんなことで笑ってるお前の方が、よっぽど無様だろ…」

これは…。

二人の仲を取り持つのは…余程大変だぞ。


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