神殺しのクロノスタシスⅢ
―――――――…回復魔法と同時に、催眠魔法をかけてやると。

ベリクリーデは、意識を失うように眠りについた。

回復魔法のお陰で、少しは血色が戻ったな。

だが、完全回復には程遠い。

王都に戻って、しばらく静養させなければならないだろう。

…で。

その前に。

「…よくもやってくれたな、お前ら」

俺とベリクリーデを取り囲む、桔梗谷の連中を見渡した。

全員が俺に敵意を向けていたが、俺は怖くも何ともなかった。

…良かったな、お前ら。今の俺が聖魔騎士団で。

そうでなかったら、お前らをただでは済まさないところだった。

「…ベリクリーデは返してもらう。失せろ」

「…!」

俺の気迫にたじろいだのか、村人達は一歩、二歩と後ずさったが。

腰を抜かしていた婆さんだけは、俺に食って掛かった。

「お、お前…!この、不浄な土地の、罰当たり共め!我らの生き神様を返せ!」

「こいつは生き神様じゃねぇ!」

そりゃ確かに、聖なる神を宿したベリクリーデは、言い様によっては生き神様なのかもしれないが。

少なくとも、こいつらが思う、この土地を守る「生き神様」ではない。

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