神殺しのクロノスタシスⅢ
「ジュリス…」

「長いこと寝てたな。目ぇ覚まさないかと思ったぞ。この眠り姫は」

読んでいたらしい本を、サイドテーブルに置き。

ジュリスは、優しい微笑みを浮かべて、私の顔を覗き込んだ。

「元気か?」

「んー…」

よっこいしょ、と起き上がり。

腕をぐるぐる回してみる。

うん。

「元気だよ」

「そうか」

「…でも、ちょっと頭がふらふらする」

「じゃあ寝てろ」

「もう大丈夫だよ」

「良いから寝てろ」

…。

仕方ないので、またベッドに横になる。

…退屈。

「…ねぇジュリス」

「ん?」

「ずっとそこにいたの?」

「いたよ。お前が目を覚ますまで、ずっといようと思ってた」

そうなんだ。

「じゃあ、私が千年くらい眠ったまま、起きなかったら?」

「千年くらい、どうってことない。俺が何年生きてると思ってるんだ?千年だろうが一万年だろうが、待ってたさ」

「…とんでもないお寝坊さんだね」

「とんでもないお寝坊さんだな。でも、そのお寝坊さんが、俺の相棒なんだ。なら、いつまででも待つよ」

「…」

…そっか。

じゃあ、私もジュリスが寝込んだら、何年でも待とう。

「…ねぇ、ジュリス」

「何だ?」

「あれから、どうなったの?」

「…今聞くのか?それ…」

「今気になったから」

私、確か変な谷にいたんだよね。

そこで、生き神様とか何とか呼ばれて…。

「私、任務ちゃんと出来た?」

「出来たよ。前も言ったろ?お前は立派に任務を果たした。立派な聖魔騎士団魔導部隊大隊長だ」

「私、もう悪い子じゃない?」

「お前は、最初から悪い子じゃねぇよ」

…そうなの?

ジュリスは、私の頭の上に、ポンと手を置いた。

そして。

「…ごめんな、ベリクリーデ」

何故か、ジュリスは私に謝った。
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