神殺しのクロノスタシスⅢ
シルナに、「令月とすぐりを仲良くさせよう」と持ちかけた、その翌日。

早速、シルナが策を講じてきた。

「さぁ二人共~!今日は良いものがあるよ~!」

満面の笑みで、学院長室に飛び込んでくるシルナ。

しかし。

「…」

令月は、興味無さそうにレポート作成に没頭。

すぐりはと言うと、わざわざ机の向きを変え、令月に背中を向けて、シルナ作成の課題に没頭。

…仲良くする気なさそうだなぁ…。すぐり…。

でも、令月の方は。

「ねぇ、『八千歳』」

「気安く話しかけないでくれないかなー」

「『魔導倫理法』でさぁ、空間魔法が要注意魔法に指定されてるのって、何で?」

「『八千代』が世界から嫌われてるからでしょ」

「分かった。じゃあそう書いておく」

一応令月の方は、仲良くする気があるらしく。

こうやって、自分から話しかけてはいるのだけど。

会話がもう。突っ込み所満載過ぎて。

『魔導倫理法』のレポートって、そういうの書くものじゃないから。

しかも令月の手元を見ると、本当にそう書いてる。

「僕が世界から嫌われてる為」って書いてる。

ちげーよ。レポート再提出させるぞお前。

「ちょ、ちょっと君達!私を無視しないで!」

ん?

そういえば、さっきシルナが入ってきたんだった。

良いものがあるよとか何とか…。

「俺忙しいんだけど。何?」

「ほらっ、ケーキ!ケーキ買ってきたんだよ!」

良いものって、ケーキかよ。

「令月君、すぐり君、二人で仲良くケーキを食べよう!甘いものを通して、二人の親睦を深めよう作戦!」

シルナの考えることなんて、所詮この程度だ。

「さぁケーキをどうぞ!どれが良い?二人共どれが良い?色々買ってきたから!」

「俺、洋菓子あんまり好きじゃないから。遠慮しとくよ」

「『八千歳』が食べないなら、僕も良いや」

「…」

二人に、あっさりと背中を向けられ。

シルナは、しばし固まった後。

「…羽久ぇぇ…」

泣きついてきた。

うん。

今日ばかりは、お前に同情してやるよ。

とりあえず、シルナに言いたいことがある。

世界の全ての子供が、お前みたいにケーキで喜ぶ訳じゃないからな。
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