神殺しのクロノスタシスⅢ
「な…何人も、だと…?」

考える。一体何事があって、そんなことになったのか。

彼氏が、何人もいる。

つまり、一妻多夫制みたいになってるってことだよな?

逆ハーレムって言うか…。

いつぞや、地下組織にいたときお得意様だった、かの死神じゃあるまいに。

いや、でも有り得ない話ではない。

ベリクリーデは、中身はあんなだが、見た目はあれで結構美人だ。

顔だけでも、充分飯食っていけるくらいには。

そして、先日の生き神様事件のときもそうだったが。

あいつは、人を疑うということを知らないからな。

付き合ってくれ、と言われれば「良いよー」とかで済ませそうだし。

何ならそのノリで、「恋人になってくれ」と言われても、恋人ってのが何なのか分からず、「良いよー」とか言ってそう。

あいつなら言う。

ついでに、ベリクリーデのそういう天然なところを利用して。

良からぬことを企む輩が、舌先三寸でベリクリーデを騙し、ベリクリーデを己のものにしている可能性もある。

それとも、本当はベリクリーデの中には、色んな男を取っ替え引っ替えしたい、という邪な願望があったのか?

かの死神のように?

天然な顔して、なかなか下衆なこと考えやがる。

…とにかく、真偽の程を確かめなければ。

さっき、自分の噴き出した紅茶で駄目にした、この書類を書き直さなければならないが。

そんなことは、後だ。

「…ちょっと、奴に会ってくる」

「あ、はい…」

俺は、それはもう全速力で、ベリクリーデのいる女性隊舎に走った。
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