神殺しのクロノスタシスⅢ
「ベリクリーデ!」

「…?あ、ジュリスだ」

「…!?」

ベリクリーデの部屋を直撃すると。

ベリクリーデは、物凄い格好をして。

珍妙なことをしていた。

まず、彼女の格好から説明しよう。

頭のてっぺんに、どデカい真っ赤なリボンの髪飾りをつけ。

前髪には、ピンクのハートの石がついたヘアピンを、5つもつけていた。

何故か、寝起きみたいに、髪の毛全体がくちゃくちゃ。

そして、着ている服。

ロリータ服って言うの?全体的にピンクと白地の布で、あちこちにリボンやフリルやレースがついている。

が、リボンが上手く結べなかったのか、腰のリボンが、ただの固結びになっている。

おまけに、背中のチャックが届かなかったようで、背中全開。

下着見えてんぞ。馬鹿。

パニエでスカートを膨らませているが、つけ方が下手くそなのか、背中側はボコッと突き出ているのに、腹部側はぺちゃんこ。

でっかいハート型のイヤリングと、これまたでっかいハートの石がついた、安っぽい指輪を両手の全部の指に嵌め。

首飾りは、カラフルな数珠みたいなネックレスを、三重にぶら下げ。

履いている靴は、無駄にヒールの高い赤いハイヒール。

慣れない化粧までしてみたのか、目の上に、派手なピンクのアイシャドウをたっぷりと塗っている。

が、塗り過ぎて、両目共に殴られたみたいになってる。

ピンクの口紅は、はみ出しまくって、こちらはたらこ唇みたいになってるし。

派手な赤いチークも塗り過ぎで、なんかのお面みたいになってる。

眉毛も描いてみたらしいが、はみ出しまくって、漫画に出てくる強面のおっさんみたいになってる。

つーかファンデーションも塗り過ぎで、舞妓さんみたいになってる。

爪にもマニキュアを塗ってるらしいが、斑に塗られ、おまけにあちこち剥げているわはみ出しまくってるわで、酷い有り様。

いつもは、だらしない格好ばかりのベリクリーデが。

今日は何だって、こんな残念な格好になってるのだ?

そして、奇天烈なのは格好だけではない。

ベリクリーデは、針と糸を持って、白いハンカチに。

…松ぼっくりを、縫い付けようとしていた。

比喩じゃないぞ。本物の松ぼっくり。

何処で拾ってきたのか、ベリクリーデは松ぼっくりに囲まれて、その松ぼっくりに糸を巻き付けようとしていた。

…マジで何がしたいの?

俺は何処からツッコめば良いんだ?

むしろ全てを見なかったことにして、踵を返すのもアリ。

…しかし。

「ジュリス、丁度良かった。私、今困ってたの」

全身困ってるよな、お前。

呼び止められてしまったからには、見なかったことには出来なかった。

そうだな、今、お前困ってるところじゃないもんな。

困り過ぎて迷走してるよ。俺が。

「何に困ってるんだ?」

自分でも、自分が今、おかしなことになっている自覚があるらしい。

それは良かった。

まず、何処から手を入れたら良い?

「松ぼっくり、足りないかなぁって。ジュリス、ちょっと拾ってきてくれないかな」

「それかよ!!」

他にも、明らかにおかしいところが山程あるのに。

物凄い、どうでも良いことを頼まれた。

松ぼっくりの数なんて、知ったことかよ!アホか。
< 781 / 822 >

この作品をシェア

pagetop