神殺しのクロノスタシスⅢ
「…その、奇天烈な格好」

「この服?」

「そう、あと顔の化粧とか、変なアクセサリーとか」

「うん」

「それは、彼氏の為か?」

「うん。『じょしちから』が上がったら、好きになってもらえるから」

「…へー…」

それはそれは。お熱いようで何より。

ベリクリーデにここまでやらせるとは、随分仲良しなようじゃないか。

「ということは、その刺繍もか?」

「うん。『じょしちから』が上昇するんだって」

さっきからお前、「じょしちから」なる謎の言葉を連呼してるが。

女子力のことだよな?

成程。

「へー、成程ね。お前は、女子力を上げて彼氏に喜んでもらおうと、刺繍だの化粧だのお洒落だのして、必死な訳だ。仲良しで何よりだな」

「…ジュリス、さっきから何で怒ってるの?」

「別に怒ってねぇし」

お前に、そこまでの情熱があったことが、意外だっただけだよ。

まぁ、ベリクリーデも一応、年頃の女だからな。

色恋に興味を持っても、おかしくないだろうよ。

聖魔騎士団は、男性比率の方が高いし。

ベリクリーデの部下に、お優しい、素敵な優男がいたんだろうよ。

で、そいつに告白して付き合っ…。

…いや、ちょっと待てよ?

俺は、自分の部下が言った言葉を思い出した。

「そういやお前、何人も彼氏がいるって噂を聞いたけど、あれって本当、」

「そんな訳で、ジュリス」

どんな訳だよ?

俺、今喋ってたんだけど。

「ずっと前から好きでした。私と付き合ってください」

ぺこり、と。

松ぼっくりを差し出され、頭を下げられた。

「…」

…俺もさ、人生長いから。

自慢じゃないけど、今まで様々な女性に…中には男性からも…愛の告白を受けたことがあるが。

こんなにも、何の色気も感じない告白が、かつてあっただろうか?
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