神殺しのクロノスタシスⅢ
それでも、折角買ってきたケーキが勿体ないので。
「あんまり好きじゃなくて良いから、とにかく食べろ。勉強ばっかりじゃ、息が詰まるだろ」
「そう!そうそう!ケーキ食べよう!皆でケーキを食べれば、世界は平和になる!」
そこまでは言ってない。
「えー…。もう、しょうがないな…」
「分かった。食べる」
よし。二人共鉛筆と筆を置いたぞ。
まずは、親睦を深めるきっかけを作ってやらないとな。
「ほら、好きなの選べ」
シルナは、Lサイズのケーキボックスに、たくさんのカットケーキを買ってきていた。
何個あるんだよ、これ。
ケーキバイキングか。
しかも、全部種類が違う。
さては、全種ワンカットずつコンプしてきたな?
「『八千歳』は何にする?」
「『八千代』が何にするかによる」
「じゃあ、僕は抹茶が良い」
「なら、俺が抹茶をもらう」
「…」
「…」
…。
敵がい心、丸出し。
「じゃあ抹茶は『八千歳』にあげて、僕はチーズケーキにしよう」
おっ、年下に譲ってあげる令月。
優し、
「そう?じゃあ俺やっぱりチーズケーキにするよ」
「…」
…。
「…じゃあ僕が抹茶を、」
「なら俺も抹茶が良い」
「それなら僕はチーズケーキに」
「やっぱり俺もチーズケーキが良い」
こいつらに、ケーキを決めさせたら。
多分、このまま夜が明ける。
すぐりの嫌がらせが半端じゃない。
いや、同じ種類を複数買ってこなかったシルナも悪いんだけど。
それから、一つ言わせてくれ。
「…そもそも、抹茶味ないぞ」
「…」
「…」
二人共、手が止まった。
ごめんな。
シルナの奴、基本的に自分の好きな味しか買ってこないから。
抹茶味とか、ちょっと苦い味のケーキは、買ってこないんだよ。
「…じゃあチーズケーキ…」
「俺もチーズケーキ」
「なら僕は何…。ショートケーキ」
「俺もショートケーキが良い」
「いい加減にしろお前ら」
永遠に決まらないよ。
もう良い。こっちが決める。
「令月がチーズケーキ!すぐりはショートケーキ!はい!これで決定!」
「えー…。俺、ショートケーキあんまり好きじゃないんだけど…」
「文句言うな!」
お前がいちいち令月に対抗するからだ。
選択肢を与えるな。
「チョコ!チョコケーキは私が食べるからね羽久。私にチョコケーキを残し、」
「で、俺がチョコケーキ!」
「僕には何ケーキくれるんですか?」
「何処から出てきたんだナジュは!お前はイチゴタルトだ」
「ありがとうございまーす」
それぞれに、紙皿に乗せたケーキを渡す。
「私は…?私のチョコケーキ…」
「シルナはなし!」
「えぇぇぇぇぇ」
たまにはダイエットしろ。
シルナは放置だ、放置。