神殺しのクロノスタシスⅢ
…ちなみに。

その後聞いたところによると、メイクアップしたベリクリーデは、他の隊長達に逐一見せに行ったらしく。

で、そこで「ジュリスにやってもらったー」と吹聴して回ったらしく。

隊長達に会ったとき、「ベリクリーデさん綺麗でしたね」と、異口同音に言われた。

良かったな、ベリクリーデ。

俺は大変だったけどな。

で、もう一つついでに。

「ほい、ベリクリーデ」

「…?なぁに、これ」

「まぁ開けてみろ」

俺は、ベリクリーデに白いハンカチを渡した。

そのハンカチを開くと。

「…あ、松ぼっくりだ」

そう、松ぼっくり。

松ぼっくりの刺繍を施したハンカチである。

「刺繍っていうのはな、実物を縫い付けることじゃなくて、そうやって糸で…」

「ジュリスが作ったの?これ」

話を聞けよ。

「そうだよ」

これまた、昔取った杵柄。

ベリクリーデに「刺繍」とは何たるかを教える為に、久々に裁縫箱を開けてみた次第だ。

さすがに俺も、松ぼっくりを刺繍したのは初めてだったがな。

普通はさぁ…花とか動物とかさぁ…。

松ぼっくりを再現するのに、ちょっと苦労したよ。

「良いか、これに懲りて、もう変なもの拾い集めてくるのはやめ、」

「皆に見せてくる〜」

「こら!話を聞け」

しかし、ベリクリーデが言うことを聞くはずもなく。

新しい玩具をもらった子供のように、とっとこ走り出していってしまった。

…全く…困った奴だよ。
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