神殺しのクロノスタシスⅢ
朝のストレッチをしていると、今更ながら、起床時間を告げるクラシック音楽が鳴り始めた。

実はこの音楽、僕はあまり好きではない。

三味線や琴の音の方が、僕の耳には心地よい。

「うーん…」

その音に起こされて、ルームメイトがむくりと起き上がった。

今年の春から、僕のルームメイトは変わった。

「おはよう、令月…」

「おはよう、ユイト」

ユイト・ランドルフ。

彼が、今年から僕のルームメイトになった。

僕は三年生で、彼は二年生。

実はルームメイトの方が、一つ年下なのだ。

だから本来は、同じ部屋になるはずはないのだが。

しかし、ルームメイトのユイトも、去年故あってルームメイトをなくし。

更に、僕も中途半端な時期に編入学したせいで、お互い部屋割りが狂ってしまった。

そのせいで、春から部屋割りを一新。

ルームメイトに困った者同士が、同室にまとめられた訳だ。

彼の方が年下とはいえ、この学院に先に入学したのは彼で、そういう意味ではユイト・ランドルフの方が先輩なので。

お互い、敬語はなしにしようということで同意している。

「相変わらず、朝からストレッチか…。熱心だなぁ」

「一日でもやらなかったら、筋肉が鈍る」

「…本当に熱心だなぁ」

むしろ、君達は少し余裕過ぎやしないか。

僕と違って色んな魔法が使えるから、それ故の余裕なのかもしれない。

僕に言わせれば、余裕とは、すなわち慢心である。

力魔法しか使えないという、極端な魔導師である僕は。

他の生徒より、遥かに努力を積み重ねなければ。

そして。

いずれ来るであろう「いざというとき」の為にも。
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