神殺しのクロノスタシスⅢ
で、何のかんのありながら。
お茶を淹れ、席に着き。
ようやく、ティータイム。
令月の前には、チーズケーキ。
すぐりの前には、ショートケーキ。
俺の前には、チョコケーキ。
何故かいきなり現れたナジュの前には、イチゴタルト。
放置していたシルナの前には、自分でモンブランを用意していた。
好きにやってろ。
「よし、仲良く食べろよ」
「いただきます」
はい、どうぞ。
全く、ケーキ一つで大変だよ。
せめて食べるときくらいは仲良くして欲しいものだ。
すると。
早速、令月が動いた。
「『八千歳』」
「チーズケーキ臭いから喋らないで」
「…」
可哀想。
「…良いよ、令月。喋りたいことがあるなら喋れば」
「…『八千歳』、チーズケーキ好き?」
「嫌い。たった今嫌いになった。『八千代』が食べてるから」
可哀想。
「そっか。好きなら一口あげようと思ってたのに」
ますます可哀想。
しかし。
「え、くれるの?」
おっ。
意外にも、すぐりが食いついた。
良い兆しだ。これは良い兆しだぞ。
「うん、どうぞ」
「ありがとー」
チーズケーキの皿をすぐりに差し出す令月。
微笑ましい。
そう、俺達はこんな微笑ましい光景が見たかった。
これで少しは、仲良く、
…と、思ったが。
すぐりは、令月がフォークを入れた断面の部分だけを、薄く切り分け。
その小さな欠片だけを残して、残りの大きなチーズケーキ塊に、ブスリとフォークを突き刺し。
一口で、全部食らいついた。
「…」
「…」
「…もぐもぐ」
令月も、俺も、止める暇がなかった。
…いるよな、たまに。
一口あげる、って差し出したら、全部食う奴。
それだけなら、ただの意地汚い嫌な奴だけど。
すぐりの奴は、令月の唾液がついてるであろう部分だけを、ご丁寧に切り分けてから。
残りの全部を、食い尽くしやがった。
「はい」
そして、空っぽになった皿だけを返す。
令月の前には、小さなチーズケーキの欠片が残っただけの、空の皿だけが残った。
…もうさ。
可哀想とか、そういう次元じゃない。
憐れ。
しかし、令月は。
「…そんなにチーズケーキ好きだった?」
「…令月…」
お前、泣いて良いと思うよ。
今度、山みたいなチーズケーキ買って、奢ってやるからな。
シルナの金で。
しかも、そんな悪逆非道なことをしておいて。
「このチーズケーキ、全然美味しくないね。こんなの食べてたの?『八千代』の味覚腐ってない?」
この毒舌。
最低だよお前は。
シルナを見てみろ。
目の前で起きた、卑劣なケーキ争奪戦に。
モンブランを食べる手を止めて、わなわな震えていらっしゃる。
その隙に。
「…栗、頂きますね」
ナジュが、こっそりシルナの皿から、モンブランのてっぺんの栗を奪っていった。
お前も最低だよ。
一緒にケーキを食べて、仲良くするどころか。
見てはいけないこの世の深淵を、見せられた気分だ。
お茶を淹れ、席に着き。
ようやく、ティータイム。
令月の前には、チーズケーキ。
すぐりの前には、ショートケーキ。
俺の前には、チョコケーキ。
何故かいきなり現れたナジュの前には、イチゴタルト。
放置していたシルナの前には、自分でモンブランを用意していた。
好きにやってろ。
「よし、仲良く食べろよ」
「いただきます」
はい、どうぞ。
全く、ケーキ一つで大変だよ。
せめて食べるときくらいは仲良くして欲しいものだ。
すると。
早速、令月が動いた。
「『八千歳』」
「チーズケーキ臭いから喋らないで」
「…」
可哀想。
「…良いよ、令月。喋りたいことがあるなら喋れば」
「…『八千歳』、チーズケーキ好き?」
「嫌い。たった今嫌いになった。『八千代』が食べてるから」
可哀想。
「そっか。好きなら一口あげようと思ってたのに」
ますます可哀想。
しかし。
「え、くれるの?」
おっ。
意外にも、すぐりが食いついた。
良い兆しだ。これは良い兆しだぞ。
「うん、どうぞ」
「ありがとー」
チーズケーキの皿をすぐりに差し出す令月。
微笑ましい。
そう、俺達はこんな微笑ましい光景が見たかった。
これで少しは、仲良く、
…と、思ったが。
すぐりは、令月がフォークを入れた断面の部分だけを、薄く切り分け。
その小さな欠片だけを残して、残りの大きなチーズケーキ塊に、ブスリとフォークを突き刺し。
一口で、全部食らいついた。
「…」
「…」
「…もぐもぐ」
令月も、俺も、止める暇がなかった。
…いるよな、たまに。
一口あげる、って差し出したら、全部食う奴。
それだけなら、ただの意地汚い嫌な奴だけど。
すぐりの奴は、令月の唾液がついてるであろう部分だけを、ご丁寧に切り分けてから。
残りの全部を、食い尽くしやがった。
「はい」
そして、空っぽになった皿だけを返す。
令月の前には、小さなチーズケーキの欠片が残っただけの、空の皿だけが残った。
…もうさ。
可哀想とか、そういう次元じゃない。
憐れ。
しかし、令月は。
「…そんなにチーズケーキ好きだった?」
「…令月…」
お前、泣いて良いと思うよ。
今度、山みたいなチーズケーキ買って、奢ってやるからな。
シルナの金で。
しかも、そんな悪逆非道なことをしておいて。
「このチーズケーキ、全然美味しくないね。こんなの食べてたの?『八千代』の味覚腐ってない?」
この毒舌。
最低だよお前は。
シルナを見てみろ。
目の前で起きた、卑劣なケーキ争奪戦に。
モンブランを食べる手を止めて、わなわな震えていらっしゃる。
その隙に。
「…栗、頂きますね」
ナジュが、こっそりシルナの皿から、モンブランのてっぺんの栗を奪っていった。
お前も最低だよ。
一緒にケーキを食べて、仲良くするどころか。
見てはいけないこの世の深淵を、見せられた気分だ。