神殺しのクロノスタシスⅢ
俺は、裏庭を回って、使えそうな枝を何本か拾い集め。

更に、ベリクリーデが買ってきていたロープを拝借して、自分で火起こしセットを作った。

「…よし、じゃあ熾すか」

「…?ジュリス…」

「何だよ?」

「ジュリスも、子供みたいだね」

「は?」

見た目は大人、中身は子供の代名詞が、何言ってんの?

好奇心いっぱいの顔で。

「こんな工作で遊ぶなんて、ジュリスも少年みたいなところがあっ、」

「おい待て、工作じゃねぇ。火起こしの道具だこれは」

枝を拾って、玩具を作った訳じゃねぇよ。

暇さえあれば、どんぐりだの松ぼっくりだの拾ってるお前と、一緒にするんじゃねぇ。

「?でもそんなの、本に書いてなかったよ」

「これは弓錐式火起こしって言ってな、ここ、弓みたいになってるだろ?」

「?うん」

「これを利用して、根気良く擦るんだよ。そうしたら、摩擦で熱が出来るから…」

俺は、早速自作の弓錐式火起こし道具を使って、火起こしを始めた。

やったことある人なら分かると思うが、これ、結構コツも要るし、根気も体力も要る作業なんだよ。

昔何度もやったことがあるから、経験はあるのだが…。

最近は、っつーか俺達魔導師だから、こんな古典的な方法を使わなくても。

杖の一振りで、炎魔法によって簡単に火をつけられるのだが。

何だかベリクリーデ、本格的なキャンプにこだわってるみたいだから。

今回は魔法に頼らず、弓錐式で原始的な火起こしを試してみようと思った。

久し振りだから、時間かかるかもしれないと思ったが。

「あ、ジュリス。湯気出てきた」

煙な。

手に力入らなくなるから、アホなこと言うのやめろ。

しかし。

ものの5分足らずで、煙発生。

火種が出来たところに、息を吹き掛けて、点火。

拾い集めてきた焚き木に、ポイッと放り投げると。

焚き木が、パチパチと燃え始めた。

ほい、一丁上がり。

「わー。ジュリス凄い」

「まぁ、ざっとこんなもんだよ」

久々にやったが、身体が覚えてるもんだな。

あー、腕筋肉痛になりそう。

でも火はつけられたし、よかっ、

「ねぇジュリス、私一個気づいたことがあるんだけど」

「…何だよ?」

「そういえば私魔導師だから、魔法使って火をつけられるんだった」

「…」

…思い出したの、今かよ。

…俺の苦労って…。
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