神殺しのクロノスタシスⅢ
枝を拾い集め、火起こしキットを用意した俺の苦労と。

明日間違いなくやって来るであろう、俺の筋肉痛の苦しみを返せ、と。

言いたいところだったが、そんなことをベリクリーデに言っても、「?」な反応をされるに決まっているので。

俺は、それらの全てを諦めるという選択をし、バーベキューを開始した。

「焼けた?ジュリス焼けた?」

「まだだよ。まだ中まで火が通ってないから駄目だ」

「えー。…じゃあもっと燃え上がれー」

「こら!魔法で火力を強めようとするんじゃねぇ」

料理にはな、火加減ってものがあるんだよ。

「でも、この間ジュリスと焼肉食べに行ったときは、もっと早かったよ?」

「あれはお前…。焼肉屋だから。こっちは炭で焼いてるバーベキューだからな?火加減が違うんだよ」

「そうなんだ…。難しいんだねー」

「…」

俺にとっては、お前の思考回路がどうなっているのか推測する方が、余程難しいけどな。

って、そうこう言ってるうちに。

「よし、そろそろ良いかな」

「わーいいただきます」

「ちょっと待て。素手で触ろうとするな馬鹿。そうじゃないんだよ」

危うく、また火傷するところだったぞ。

動物でさえ、火を見たら恐れるというのに、お前と来たら。

「こういう大きい肉の塊はな、中まで火が通りにくいから、こうして焼けた表面だけをナイフで削いで…」

トングで骨付き肉を掴み、ナイフを器用に使って、焼けている部分だけを切り取り。

ベリクリーデの紙皿に乗せてやった。

うん、良い感じの焼け具合、

「良いか、熱いからちょっと冷まして食べ、」

「いただきまーす」

「話を聞けって!」

ぱくっ。

そして。

「熱い」

「当たり前だろ…」

さっきまで、もうもうと燃えてる火で炙られてたんだぞ。

「口の中、火傷した〜」

「はいはい…。水やるから、ほら」

「痛い〜…」

「はいはいって…」

困った奴だよ。

「ほら、野菜も食べろよ」

「野菜嫌い」

子供かよ。

「良いから食え」

「うぇ〜」

「うぇ〜じゃねぇ」

相変わらず、世話の焼ける奴だよ。
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