神殺しのクロノスタシスⅢ
何故か、俺が手伝わされた結果。

ベリクリーデは、無事寝袋にすっぽり収まった。

「凄い。あったかい」

「良かったな」

最近の寝袋は質が良いからな。一見薄そうに見えても、中は案外暖かいのだろう。

「あ、なんか私、今芋虫みたいじゃない?ほら、こうして…」

「こら、やめろ」

何、尺取り虫みたいな格好してるんだ。

「とにかく、用は済んだから俺はかえっ、」

「ジュリスも早く、芋虫になろうよ」

…は?

「早く。一緒に寝よ」

俺は今、とんでもない台詞を聞いたような気がする。

そういや、俺の手元には、もう一組の寝袋。

…さっき、ベリクリーデに渡されたんだっけな。

…何で?

「ジュリスと一緒に尺取り虫〜」

尺取り虫言うな。

それより。

「何で俺まで?」

切実に、そこを聞きたい。

「だって、夜に一人で外で寝るの、怖いんだもん」

じゃあキャンプをするなよ。

外で寝るのが怖いなら、何故キャンプを企画したんだ?

「冗談じゃねぇよ!何が嬉しくて、お前と一つ屋根の下…」

「屋根じゃないよジュリス。テント」

どっちでも良いわ!

「お前と一つテントの下、一緒に寝なきゃならないんだ!?」

「私が寂しいから」

何じゃそりゃ。

「…あのなベリクリーデ。お前は根本的なところからして、勘違いをしているようだ」

「…?」

首を傾げるな首を。

「いくらキャンプと言えど、未婚の男女が一つ屋根、いや一つテントの下一緒に一晩過ごすなんて、倫理的に問題があるだろ?」

「…??」

駄目だ、全然分かってない。

「…グズグズ言ってないで、早く寝ようよ」

むしろ、俺が駄々こねてるみたいにされてる。

お前だよ。駄々こねてるのは。

「早く〜。私寝られないよ」

「知るかよ!俺はな、後で誤解を招きそうなことはしない主義…」

「??誰が何の誤解をするの?」

「お前にはまだ百年はえーよ!」

ベリクリーデと一つテントの下、一緒に寝るなんて。

そんなの絶対御免だ、と思った。
< 806 / 822 >

この作品をシェア

pagetop