神殺しのクロノスタシスⅢ
分かるか?この苦痛が。

同じこと書くの、もう三回目なんだけど。

さっさと終わらせてぇ。

こうして作業をしていると、最早焦りさえ感じる。

そうこうしているうちにも、またベリクリーデが何かをやらかすのではないかと。

まず、部下が紅茶を持ってきてくれるところから、フラグが立ち始める予感。

すると。

「ジュリス隊長、お疲れ様で、」

「いや待て。紅茶は要らない」

「え?」

危ねぇ。またフラグが立つところだった。

ここで紅茶を啜るところから、まずフラグが始まるからな。

そこで俺は、ここで紅茶を飲まないという選択肢を取る。

そうすることで、再三立ちまくっているフラグを回避することが出来る。

「た、隊長?」

「済まん、あとちょっと…。あとちょっとで終わるから、少し待っててくれ」

「は、はぁ…」

ごめんな、お前は何も悪くない。

でもフラグが立つ前に、さっさと書類作成を終わらせてしまおう。

そうすれば、俺は改めて、ゆっくりと紅茶を楽しめるという訳だ。

俺は、さっさと書類仕事を終わらせ。

三度目の正直、ようやく終わったところで。

「ふぅ、終わった…。長い旅路だった…」

本当に…長い旅路だったよ。

たった一枚の書類に、こんなに時間をかける羽目になるとは。

人生、分からないもんだな。

俺は、完成した書類を脇に置き。

「よし、もう出来たから、持ってきてくれ」

「は、はい…。ちょっと冷めちゃったかもしれませんが…」

「いや、充分だよ」

これで、例の「ベリクリーデの奇行に巻き込まれるフラグ」を回避出来たのなら。

安いもんだ。

こうして、俺はようやく、安心して紅茶を啜ることが出来た。

美味い。ただのティーバッグなのに、今まで飲んだ紅茶の中で、一番じゃないかってくらい美味い。

ほっと一安心して、俺は紅茶のティーカップをソーサーに置いた。

…落ち着いたところで。

「今日は、ベリクリーデは何もしてないか?」

「えっ?」

「いつも変なことばっかしてるだろ。今日は大人しくしてるんだろうな?」

紅茶噴き出しフラグを回避したということは、

あいつも今日は、大人しくしているということだろう。

そうだよな。たまにはそんな日がなければ。

「えぇ、特には…」

ほらな。良かった。

見たか。俺ほどにもなると、こうして自らの行動を変えることによって、フラグ乱立を阻止、

「今日は…ただ、変なことばかり言ってるだけなので、気にしなくて良いと思いますよ」

「…は?」

お前、今何て言った?
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