神殺しのクロノスタシスⅢ
「…?」

ベリクリーデは、ぽやんとしてベッドに腰掛けていた。

…?

とりあえず、力を暴走させてはいないようだが。

「お前…ベリクリーデ、か?」

俺は、杖を向けて尋ねた。

もう「入れ替わって」いるのか。それとも、まだベリクリーデのままなのか。

既に聖なる神が、ベリクリーデの身体を乗っ取っているのだとしたら。

本格的に、俺の命運はここで尽きそうだな。

「?ベリクリーデだよ?」

きょとんとして、彼女は答えたが。

俺はその言葉を信用しなかった。

聖なる神が、俺達の油断を誘って演技している可能性だってあるのだから。

…ん?

いや、でも…聖なる神は、自分に反旗を翻した、シルナ・エインリーの仲間である俺達を許さないはず。

決して、俺を忘れてはいないはずだ。

例え演技するつもりだとしたって、俺を見たら、すぐさま襲い掛かるのでは?

いや、そもそも。

聖なる神ともあろう者が、演技なんて小細工をするのか…?

と、いうことは。

「まだ…ベリクリーデ、なんだな?」

「…??ベリクリーデだよ」

そ…それは何より。

どうやら、まだ「入れ替わって」はいないようだ。

なら、望みはある。

「それよりジュリス、何で私に杖を向けて…。…あ」

「あ?」

「…うっ」

「!?」

ベリクリーデは、いきなり胸を押さえた。

…!やっぱり聖なる神が、ベリクリーデの中で暴れ出して…!

「血が…血が騒ぐ…!私の秘めた聖なる力が…!」

「堪えろ、ベリクリーデ…!すぐに学院長達が来る。それまで自我を保つんだ!」

「ふぇ?学院長…?」

「は?」

…何だ?

俺、何かおかしなこと言った?
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